2009 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面上における水分子の吸着状態および反応に関する分子レベル解析
Project/Area Number |
08J08759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本林 健太 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 振動分光 / 水 / 金属表面 / 絶縁体薄膜 |
Research Abstract |
アクションスペクトルは、表面に吸着した分子の振動を単一分子レベルの空間分解能で検出する走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた実験手法である。昨年度はこの実験結果の定量的な解析手法を開発し、振動エネルギーの精度良い決定を可能にした。今年度はこの解析から、(1)振動モード間のカップリングの時定数、(2)隠れた振動モードの励起、など反応メカニズムに関する深い知見が得られることを発見した。 昨年度開発したカーブフィッティングによる解析手法で用いた4つのパラメータのうち、速度定数の解釈に新たな意味を見出した。他の実験の結果(非弾性トンネル分光におけるピーク高さ、時間分解赤外分光などで検出した振動寿命)と組み合わせることで、反応メカニズムの中核をなす、振動モード間の非調和カップリングの時定数を求められた。例えばCO/Pd(110)におけるホッピングの結果からは、CO伸縮振動と束縛併進振動の間のカップリングの時定数が4.5×102/sと算出された。この値は本研究で初めて明らかになった量である。 また、Cu(111)上における(CH3S)2の解離反応の結果の解析を通じて、この解析手法が、直接スペクトルに表れない隠れた振動モードの励起を検知できることがわかった。この反応のスペクトルでは、CH伸縮振動に対応するピークが2電子過程として実験的に検出された。一般にはこの2電子過程はCH伸縮振動の2段励起と捉える。しかしカーブフィッティングによる解析の結果、1つの電子がCH伸縮振動を、もう1つの電子がSS伸縮振動を励起すると仮定した場合のみ、反応次数変化を含めた実験結果が再現された。つまり、直接ピークとして表れないSS伸縮振動の励起が反応に必要であることを検知した。反応に必要な振動モードは固体表面における化学反応のメカニズムの重要な構成要素であり、中でも隠れたモードは本解析で初めて直接的に検出した。
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Research Products
(7 results)