2009 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢化社会向実用的記憶理論の提案―高齢者のメタ記憶の本質とメカニズムの解明―
Project/Area Number |
08J08762
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
舘 瑞恵 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | メタ記憶 / 認知 / 言語 / 老化 |
Research Abstract |
記憶に対する確信の強さと記憶の正確さとの関連性(C-A関連)に関する研究については、昨年度から引き続いて実験研究を行った。その結果、目撃記憶のような自身の体験に関する記憶、エピソード記憶においては、C-A関連は低いが、言葉の意味や辞書的な知識に関する記憶、意味記憶においては、C-A関連が高いことがわかった。また、情報の種類によらずとも、対象となっている情報に対する親近性の高さによっても変わることが明らかになった。 記憶における言語の影響については、促進的な側面と阻害的な側面があることが分かっている。今回、言語隠蔽効果という、記憶情報を言語化することが記憶を蝕むという現象に着目して、記憶モデルの考察を試みた。その結果、人間の情報処理を、包括的に対象を捉える全体処理と、分析的に対象の詳細を捉える部分処理とに区分し、それらに言語処理の特性を対応づけ、前者の処理形態では言語を介入させることは処理能力を低下させるが、後者の処理形態ではそのような影響は受けない、とするものが最も有効だと結論付けた。 認知能力における老化の影響について、文献研究を行った結果、老化といっても、その影響の現れ方は、個人の能力や認知特性、対象となる情報の性質などにより千差万別であることが分かった。更なる検証は必要であるにしろ、現時点で明言できることは、老化により、全認知能力が低下あるいは消失する訳ではないことである。加齢と共に、単純に情報処理にかかる時間が多くなるために、一定時間内でこなせる課題量が少なくなるため、能力が低下した、と評価されがちであるが、実際は、時間的猶予を与えれば、課題遂行に関わる能力には何ら問題がないケースが多い。つまり、単純に情報処理速度の問題であることが多いのである。そのことをふまえると、高齢者に時間的猶予を与えることこそが、彼らの認知能力を最大限に発揮させるための最善の策だといえるだろう。
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Research Products
(2 results)