2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 眞理 The University of Tokyo, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 孵化 / 卵膜 / 分子進化 |
Research Abstract |
孵化酵素と卵膜タンパク質の分子共進化過程を考察することを目的に、孵化酵素LCEによる種研異的卵膜分解に寄与する卵膜タンパク質とLCEの領域を正真骨類に属する種々の魚からクローン化し、種間で配列を比較した。その結果、種特異性に重要であることがわかった卵膜側1箇所・酵素側4箇所のアミノ酸残基は多くの魚種間で保存されていたが、メダカが属するダツ目内の魚類では変異が生じていた。クローン化した配列を元に、最尤法により祖先配列を演繹してみると、ダツ目内の進化過程で先に酵素側に変異が挿入し、その後、メダカ属の進化過程で卵膜側に変異が挿入されたことがわかった。このため、正真骨類の祖先型の配列を保存しているFundulusは卵膜が変異したメダカの卵膜を分解できないと考えられる。一方、メダカでは祖先型の配列も変異した配列もどちらも分解する活性を持っているが、切断点近傍以外の領域にも酵素との相互作用する領域があると予想され、そのような領域の変異によってメダカのLCEはFundulusの卵膜を分解しないと考えられる。これがメダカとFundulus間で見られる種研異的卵膜分解をもたらしていると考えられる。その共進化機構を明らかにする目的で、ダツ目内での変異によって酵素の活性がどのように変化していったのかを調べた。ダツ目に属する魚種(サンマとジャワメダカ)のLCEのリコンビナントタンパク質を作成し、種特異性に寄与する1箇所のサイトを様々なアミノ酸で置換した変異ペプチドを用いて、特異性を調べてみると、Fundulusのものと比べ、LCEの特異性が広くなっていることが示唆された。これらの結果から、酵素側が先に変異することによって基質特異性が変化し、変異した基質を分解するようになる、という酵素と基質の分子共進化の1例を示すことがでた本研究は意義深いものである。
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Research Products
(6 results)