2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 眞理 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 孵化 / 卵膜 / 分子共進化 |
Research Abstract |
孵化酵素は卵膜を分解するプロテアーゼである。メダカとFundulus間では種特異的な卵膜分解を示す。これは、孵化酵素側4ヶ所と卵膜側1ヶ所(P2サイト)のアミノ酸残基の変異によってもたらされている。この酵素側4ヶ所の変異はP2サイトのアミノ酸残基に対する特異性を大きく変えていることをすでに明らかにしている。今年度はさらに、孵化酵素による卵膜分解系が正真骨類の進化過程でどのように変化したのかを考察した。まず、クローン化した種々の正真骨類の孵化酵素LCEと卵膜タンパク質遺伝子から、最尤法でそれぞれの祖先型遺伝子配列を推定した。この中から、新真骨類・棘鰭上目・ダツ目・メダカ属の祖先型の孵化酵素の組換えタンパク質を作成し、P2サイトに対する特異性を調べた。その結果、新真骨類では特異性が高かった。酵素側4ヶ所のアミノ酸残基はその後の進化過程で少しずつ変異したが特異性は維持されていた。一方、メダカ属の祖先で生じた変異により特異性が広くなった。正真骨類の進化過程におけるP2サイトの変異を見てみると、祖先型のアミノ酸残基は保存されていたが、メダカ属内での進化過程で変異したことが推定されている。これらの結果から、メダカ属の祖先でP2サイトに対する特異性が広くなり、その後メダカ属内で生じたP2サイトへの変異が許容されたと考えられる。本研究は、酵素と基質の共進化過程を示すことができた点で意義深い。 本年度は上述の研究と平行して、トゲウオ目魚類に着目した孵化酵素と卵膜タンパク質の分子共進化の研究を進めた。トゲウオ科に属するイトヨはメダカなどと同様に1種類のLCEのみを持つが、同じトゲウオ科に属するトミヨでは2種類のLCEをもち、組換えタンパク質作成実験の結果、それぞれが機能分化していることがわかった。トゲウオ科に属するCulaea inconstans、Apeltes quadracus、Spinachia spinachiaも交えて解析したところ、トミヨとCulaea属の共通祖先で遺伝子重複が起きたことを示唆する結果を得た。
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Research Products
(10 results)