2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08820
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 俊哉 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カイコ / 触角 / 形態形成 / 分子生物学 |
Research Abstract |
鱗翅目昆虫(ガ類)は夜行性生活への適応の過程でフェロモンの容効率が高い葉脈状の分岐構造を持つ触角を獲得してきたと考えられている。本研究では進化の過程で、この構造がどのように獲得されてきたのかを分子発生学的観点から明らかにすることを目的としている。本年度は、(1)カイコガを用いて葉脈上の側枝の形成過程における細胞増殖過程の観察と、(2)成長中心で発現する成長因子遺伝子のORF全長のクローニング、(3)側枝を持たない鱗翅目昆虫での遺伝子クローニングの3つのアプローチで研究を遂行した。 (1)に関して、触角の側枝は、神経性腹側上皮・非神経性腹側上皮・背側上皮の3種類の上皮からなることと、形態形成の過程で細胞増殖がそれぞれの領域で異なるタイミングで制御されていることを明らかとした。これにより、適切な領域で、適切な時期に細胞増殖を行うことが側枝の形成に重要だということと、その領域特異性を制御する転写因子の機能的重要性が示唆された。 (2)に関して、側枝形成の際の成長中心で発現する成長因子(Wntシグナルのリガンドwnt-1、EGFRシグナルの活性化因子rhomboid)の機能を明らかにするために、強制的に遺伝子を発現させる系としてin vivoエレクトロポレーション法を確立した。また、wnt-1、rhomboidのORF全長をクローニングした。これら成長因子の側枝成長に与える影響、及び、その特有な発現領域の制御機構の解析により、側枝構造獲得に向けた発生メカニズムの進化に関する理解が進むことが期待される。 (3)に関しては、鱗翅目昆虫の中で側枝を持たないヨトウガにおいてカイコの側枝の予定領域で発現する遺伝子の相同遺伝子をクローニングし、種間での発現パターンの比較解析に備えた。種間での遺伝子発現の比較解析によって、側枝獲得の歴史的背景が明らかになることが期待される。
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