2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代沖縄の祖先祭祀と諸個人のライフヒストリーに関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
08J08833
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉田 佳世 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 祖先祭祀 / ライフヒストリー / ジェンダー・フェミズム / 女性 / 沖縄 / 文化の継承 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代沖縄の祖先祭祀について、ライフヒストリーの手法を用いながら分析することにある。沖縄社会が近代化するなかで、そこに暮らす彼/彼女らが、祖先祭祀に関連する伝統的慣習といかに関わっているか、その実態を明らかにすることを目指すものである。近年、沖縄では、祖先祭祀の実質的運営や継承において、個人の自由な自己選択による進学や就職、相続をはじめとする近代的価値観との相克から、世帯及び親族間の軋轢や葛藤を生み出しているという状況がある。平成21年度は、とりわけ女性と祖先祭祀との密接なかかわりに注目し、いかに沖縄の伝統的慣習が次世代へ受け継がれていくのかそのメカニズムの解明を中心に研究を行った。 4月から5月までは申請者がこれまで行ってきた文献研究と理論研究の拡充と総括を行った。中部地区の関係諸機関(名古屋大学図書館等)沖縄県の関係諸機関の資料をもとに、沖縄の祖先祭祀と社会組織に関する研究動向を把握するとともに、新たな試みとしてジェンダー・フェミニズムに依拠する諸研究を精読し理論の拡充に努めた。6月から9月初旬、および、1月から2月初旬までの計4ヶ月間は、沖縄県国頭郡金武町にて現地調査を行い、祖先祭祀の担い手である女性を中心にライフヒストリーの手法を用いながら聞き取り調査を進めた。その結果、祖先祭祀の遂行が家族あるいは世帯成員への愛情表現として女性間で評価されていること、また、夫婦間における妻の夫への主張の基盤ともなっていることなど、女性の社会的評価と祖先祭祀が深い結びつきを持つことが、女性の祖先祭祀への積極的参与を促す要因となっていることが明らかとなった。また、それと並行し、その成果を学術雑誌への投稿や学会での口頭発表において公開し、研究のさらなる深化を目指した。
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Research Products
(3 results)