2008 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済化後のモンゴル牧畜社会に関する人類学的研究-放牧地の土地政策を中心として
Project/Area Number |
08J08872
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
冨田 敬大 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文化人類学 / モンゴル / 牧畜 / 土地 / 市場経済 / 社会主義 / 法制度 |
Research Abstract |
本研究は、モンゴル国における近年の土地制度改革による影響を捉えていくために、社会主義から市場経済への移行に伴うモンゴル牧畜社会の変容を、地方社会の土地利用に焦点をあてで明らかにすること目的としている。ここでは具体的に、モンゴル国の北部に位置するボルガン県オルホン郡を調査地とした。 初年度ではまず、このオルホン郡における体制移行期の家畜生産と各世帯の牧畜活動について、2008年8月から2009年2月にかけて約5ヶ月間の現地調査を実施した。その結果、オルホン郡の第2行政区では、市場経済化後の牧民世帯の急激な増加に伴う放牧地の分割、家畜囲いや畜舎の増加と偏在によって、各世帯の利用可能な牧地面積が社会主義時代に比べて大幅に減少してきたことが明らかとなった。ただし、牧民世帯による土地利用とは、このような宿営地を中心とする日常的な生活空間に限定されるわけではない。具体的には、個別世帯での参与観察の成果をもとに、彼らの土地利用が、網の目のように広がる親戚・縁者のネットワークの中で、草原と定住地をまたにかけて行う多様な実践であることを明らかにした。 また、平成18年度から着手している市場経済化後の諸法令の整理・翻訳を継続した。具体的には、『土地関連法規定集』に収録されている諸法令の翻訳を進める一方で、『モンゴル人民共和国土地使用法』など社会主義時代の関連する資料や文献の収集を行った。 さらに、博士予備論文(修士論文に相当)の成果を踏まえて、市場経済化後の地方社会における放牧地の利用と管理についてまとめたものを、5月に文化人類学会で発表した。 以上のように、初年度は、これまで積み重ねてきた研究の成果を学会等で発表するとともに、長期の調査により博士論文執筆の基礎となるデータの収集を進めた。
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Research Products
(3 results)