2010 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済化後のモンゴル牧畜社会に関する人類学的研究―放牧地の土地政策を中心として
Project/Area Number |
08J08872
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
冨田 敬大 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | モンゴル / 牧畜 / 社会主義 / 市場経済 / 歴史人類学 / 家畜 / 土地私有化 / 法制度 |
Research Abstract |
本研究は、モンゴル国の土地利用と社会変化に関する人類学的な研究である。すなわち、本研究の目的は、社会主義から市場経済への移行に伴うモンゴル牧畜社会の変容を、ポスト社会主義期の土地・家畜・人の関係に焦点を当てて明らかにすることにある。初年度および次年度は、長期の現地調査により博士論文執筆の基礎となるデータの収集・分析を進めた。最終年度では、それらの成果をもとに、具体的に以下の二つの方向から研究を行い、博士論文(『モンゴル牧畜社会の土地利用と社会変化-ポスト社会主義期の土地・家畜・人の関係』)を完成させた。 第一に、本研究の調査対象地であるモンゴル北部・ボルガン県オルホン郡の家畜生産とその変化について検討した。ここでは、平成21年度から着手しているオルホン郡の『家畜資産台帳』(1971-2000)や『地方議会決定』(1962-1991)などのローカルな統計史料や行政文書の翻訳・分析をもとに、社会主義時代から市場経済化後の現在に至るまでの家畜生産をめぐる変化と持続について検討した。その上で、第二に、現代オルホン郡の牧畜経営の特徴について考察を行った。その結果、地方の人びとは、社会主義時代の制度や規範に直接的・間接的に依拠しながらも、そこから逸脱する個別具体的な実践を行っており、そのことが市場経済化後の経済的な困難を乗り越えるための重要な戦略として機能してきたことが分かった。 以上のことから、市場経済化後のモンゴル国では、国家政策のなかで土地(その資源)と人の関係が重視されるようになったのに対して、地方の人びとは家畜との結びつきをさらに深めている。博士論文では、こうした齟齬が近年の土地をめぐる問題の核にあることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)