2009 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済化後のモンゴル牧畜社会に関する人類学的研究―放牧地の土地政策を中心として
Project/Area Number |
08J08872
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
冨田 敬大 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 文化人類学 / モンゴル / 牧畜 / 土地 / 家畜 / 市場経済 / 社会主義 / 法制度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、モンゴル牧畜社会の土地利用と社会変化を、ポスト社会主義期の土地・家畜・人の関係に焦点を当てて明らかにすることである。次年度では、具体的に以下の三つの方向から研究を行った。 第一に、平成18年度から着手しているモンゴル国の放牧地に関する諸法令の翻訳・分析を継続した。具体的には、『モンゴル人民共和国法令集』と『土地関連法規定集』に収録されている法規定の検討をもとに、土地法制における牧民と土地の関係が移行期の政治経済変化に適合的なものとして読み換えられてきたことを明らかにした。 第二に、本研究の調査対象地であるモンゴル国北部・ボルガン県オルホン郡の1960年代から2000年代にかけての社会経済的な脈絡とその変化が、当該地域の放牧地の利用と管理に与えた影響について検討した。社会主義時代には、牧畜協同組合のもと、家畜飼育をめぐる労働組織と牧地管理が分かちがたく結びついていたが、市場経済化後の自営牧民の急激な増加によって、放牧地を適切に維持・管理することが困難になっていることを確認した。 第三に、草原と定住地の関係を中心に、市場経済化後の地方社会における牧畜経営について検討した。地方の人びとは、彼らをとりまく厳しい経済状況の中で、各地域のもつ特性を最大限に活かしながら家畜飼育と居住地の選択を行っており、そのことが複数の世帯の協力関係によって支えられてきたことが分かった。さらに、こうした世帯間協力の中心をなす家畜の預託に着目し、その性質と社会的な機能について、2-3月にかけて約三週間の予備調査を実施した。 以上のように、次年度は、初年度に収集したデータの整理・分析を通して、国家、地方行政、世帯といった異なる位相における土地・家畜・人の関係を具体的に検証する作業を進めた。
|
Research Products
(8 results)