2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08879
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 雅浩 慶應義塾大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 精神医学史 / 歴史社会学 / 医療社会学 / ノイローゼ / ヒステリー / 精神疾患 / メンタルヘルス / 神経衰弱 |
Research Abstract |
本年度は過去3年間にわたる研究活動のまとめとして、(1)近代日本における大衆的な精神疾患言説の通時的分析を行い、(2)その大衆化要因を比較歴史社会学の視点から考察した。前者の通時的分析としては、近代日本における精神疾患言説を5つの時期(第I期:1870~90年代、第II期:1900~10年代、第III期:1920~30年代、第IV期:1950~1970年代前半、第V期:1970年代後半以降)に区分し、それぞれの時代に特有な言説の布置を明らかにした。また後者の言説大衆化に関する比較歴史社会学的考察からは、次のような知見を得た。第一に、各時代の精神疾患言説には、それらを存立させてきた普遍的な構造、すなわち各期に共通して見られる言説上の特徴や諸アクター間の関係性が認められること。具体的には、各期の医学言説が(a)同時代の社会経済的な変動と間言説的な関係を構築することで疾患の社会問題化を推進してきたこと、(b)疾患の解釈において対立する複数の医学者の見解が示され、そのことが現象の医療対象化を継続させてきたこと、(c)マスメディアと医学の協調/対立構造の中で、精神疾患に対する大衆的な関心が惹起され続けたことなどを明らかにした。また第二に、近代日本における「神経衰弱」「ヒステリー」「外傷性神経症」「ノイローゼ」という四つの疾患の流行現象を比較し、大衆的な精神疾患言説が構成されるに至る社会学的な要因について考察した。その結果、疾患の流行が引き起こされる背景には、(1)医学界の中枢にいる医学者集団が疾患の研究に参与していること、(2)精神医療体制の何らかの変動が存在していること、(3)疾患の病因が明確ではないこと、(4)政治的抑制因子が存在しないこと、以上四つの条件が必要であることが示唆された。
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Research Products
(1 results)