2009 Fiscal Year Annual Research Report
「パート主婦」による「労働」をめぐる思想実践の同時代史:女性当事者たちの活動から
Project/Area Number |
08J08933
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
村上 潔 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 主婦 / 主婦論争 / 女性学 / 女性労働 / 女性の貧困 / パートタイム労働 / フェミニズム |
Research Abstract |
平成21年度の主な研究成果を以下に示す。 1、学術論文 (1)1971年12月から1972年3月にかけて東京都国立市公民館で行なわれた市民大学セミナー「私にとっての婦人問題」の記録である『主婦とおんな』を中心的題材として、主婦当事者たちが自らの共同思考によって「主婦的状況」という概念を獲得する過程を示し、その後の女性たちの思想・運動の展開も含めてその意味を評価した。(『立命館人間科学研究』19掲載論文) (2)世界的なエコ・フェミニズムと日本のウーマンリブから提出された「主婦」をめぐる論点に、戦後のフランス・日本における「女性性」を関する思想を関連づけて、「主婦性」なる概念の把握を試みた。(『生存学』02掲載論文) (3)「主婦」のありかたをめぐる戦後日本における最初の大規模な論争「主婦論争」に関する考察。主婦は「働くべき」か否かという対抗図式による整理のみでは「(パートなど悪条件で)働かざるをえない」階層の存在と利害が抜け落ちてしまう問題を指摘し、現在に至る女性政策・女性運動の流れをふまえて、いま改めて焦点化されるべき対象と課題(女性による自律的労働実践の模索、「女性と/の貧困」の言挙げ、など)を設定した。(『現代社会学理論研究』04掲載論文) いずれも、女性当事者たちによる過去の思想実践の遺産と現在の「女性の働き方」・「女性の貧困」をめぐる動向を重ねあわせた考察となっており、女性学の範疇のみならず社会思想史・社会運動史的にも意義ある成果である。 2、学会報告 社会文化学会大会における報告「「女性の貧困」の問題化における諸問題と展望」では、2008年より活動を開始した<女性と貧困ネットワーク>が、従来の「女性労働」をめぐる議論ならびにそれに関する運動が前提としてきた一定の規範を揺り動かす/相対化する役割を果たしていることを述べ、その社会的・運動的意味を強調した。
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Research Products
(5 results)