2009 Fiscal Year Annual Research Report
小型魚類の視運動反応の数理的解析とその神経・分子基盤の解明
Project/Area Number |
08J08937
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末廣 勇司 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メダカ / 視運動反応 / 数理解析 / 神経基盤 |
Research Abstract |
1.これまで視運動反応(縞への追従運動)に関する研究は、縞の速度が一定な条件で解析されてきた。しかし、実際の生物の環境応答行動を表す理論モデルの構築や、その神経機構を探る上では、環境の変化へのロバストな対応能力も考慮に入れる必要がある。そこで私は東京工業大学との共同研究により、コンピュータ制御によって視運動反応中に縞の速度を変化させる装置を作成した。これを用いてメダカに正弦波様に変化する速度で動く縞を提示したところ、縞の速度変化が低周波で起こるときには、メダカの追従速度も縞と同じように正弦波様に変化するのに対し、高周波になると平均的には縞と同じ速度で追従し続けるにも関わらず、正弦波様の変化は見られなくなった(紀要に一部投稿)。このとき、メダカの旋回応答は縞の速度変化に対して短い潜時で達成されるのに対し、遊泳速度の応答はより長い時間を必要とした。これは、視覚刺激の変化に対して進行方向の調節によって部分的に対応する一方、遊泳速度の調節が遅れることで、視覚情報の小規模な変化や瞬間的な変化、あるいは極端に高周波な変化などに過剰に反応して行動を乱すことなく、縞への追従という目的をロバストに達成し続ける機構の一助になっている可能性を示した。 2.特定の神経で機能阻害を行い、どのような行動異常が起こるかを調べ、理論モデルによるシミュレーションと比較することで、魚の脳内における環境応答行動の神経機構を探る上で、機能修飾を起こす神経を限定し、かつ初期発生に影響を与えないようにする必要がある。2009年度の研究で、私はCre-loxPシステムを介して神経興奮抑制性タンパクを発現するトランスジェニックメダカを作成し、Cre遺伝子の時間的・空間的発現制御のために、理研との共同研究により、ヒトのアデノウィルスベクターをin vivoで魚の脳に感染させる系を世界で初めて確立した。
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Research Products
(6 results)