2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞集団の活動の情報量解析による一次視覚野における情報符号化の神経基盤の解明
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08J08950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大泉 匡史 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情報符号化 / 嗅覚 / ショウジョウバエ / 触角葉 / シナプス前抑制 / シナプス後抑制 |
Research Abstract |
昨年度は一次視覚野の側方向結合が情報符号化効率に与える影響に関する研究を行った.昨年度の研究で用いた理論的枠組みは他の領野にも応用可能であり,特に我々はショウジョウバエの触角葉における局所介在細胞(LN)が匂い情報の符号化効率にどのような影響を与えているのかを調べた.ショウジョウバエの触角葉では,匂い物質が来るとまず嗅覚受容細胞(ORN)が発火し,その情報が投射細胞(PN)へと送られ,さらにPNの信号が高次の領野へと運ばれる.ORNからPNに情報が伝わる際にLNが匂い情報の信号に何らかの作用を及ぼす.LNが及ぼす作用は近年の実験により,抑制性の入力をORN側に与えるということが分かっている.これはシナプス前抑制と呼ばれる抑制である.一方,シナプス後抑制という抑制はPN側に与える抑制のことを指す.我々は生体内に存在するシナプス前抑制が,効率的な匂い情報の符号化を行うために存在しているのではないかという仮説に基づいて理論的研究を行った.具体的にはまず,ショウジョウバエ触角葉のネットワークモデルを構築した.次に入力として電気生理学実験で得られているORNのデータを用いて,ネットワークモデルのシミュレーションを行った.最後に,得られたシミュレーションデータから匂い情報符号化の効率をサポートベクターマシンを用いて評価した.結果,適切な大きさのシナプス前抑制を与えると匂い情報符号化効率が上昇することが分かった.興味深いことには,シナプス後抑制では匂い情報符号化効率は単に減少するのみであることも分かった.これは,シナプス前抑制では様々な匂いに対するPN反応の脱相関(Decorrelation)が起こるのに対し,シナプス後抑制ではPN反応の相関に変化がないことに起因する.以上の結果は,ショウジョウバエの生体内に,シナプス後抑制ではなくシナプス前抑制が存在する機能的意味を与えるものである.
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Research Products
(10 results)