2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞集団の活動の情報量解析による一次視覚野における情報符号化の神経基盤の解明
Project/Area Number |
08J08950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大泉 匡史 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 一次視覚野 / フィッシャー情報量 / 情報符号化 / メキシカンハット型結合 |
Research Abstract |
一次視覚野の神経細胞は線分の方位の情報を符号化していると考えられている.我々は一次視覚野のネットワークモデルを構築することで,神経細胞間の結合および神経細胞の発火特性が情報符号化の精度に与える影響を調べた.情報符号化の精度はフィッシャー情報量を用いて評価した.一般に,リアリスティックなネットワークモデルからフィッシャー情報量を計算することは困難である.そこで,我々はスパイクレスポンスモデルという解析的に取り扱いやすいニューロンモデルを用い,フィッシャー情報量を解析的に計算する理論的枠組みを構築した.一次視覚野のネットワークモデルとしては,最適方位が近い神経細胞同士は興奮性,遠い神経細胞同士は抑制性の結合があるモデルを考えた.このような結合はメキシカンハット型結合と呼ばれる.先行研究においてはメキシカンハット型結合が存在すると,存在しない場合に比べて情報量が非常に多く損失することが報告されている.それに対して,我々は神経細胞間の興奮性,及び抑制性の結合の強度を系統的に変化させることで,あるパラメータ領域においてはメキシカンハット型結合が情報量を上げ得ることを示した.実際の一次視覚野における神経細胞間の結合が情報量を上げる方向に働いているかどうかを調べることが今後の課題であるが,本研究はそれを調べる上での理論的な基礎を築いた研究であると言える.また,本研究において用いた,ネットワークモデルから神経細胞が符号化している情報量を計算する,という理論的枠組みは一次視覚野たけでなく他の領野でも応用可能であり,我々は現在一次嗅覚中枢の研究も行っている.
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Research Products
(12 results)