2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ヨーロッパ自由主義勢力と議会制-オランダを中心に-
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08J08966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 由子 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オランダ / 議院内閣制 / 自由主義 / 吉野作造 / 19世紀 / 二元的議会制 / ヨーロッパ政治史 / 二元主義的政治慣行 |
Research Abstract |
本年度は、修士論文の加筆修正を行い、岸本由子「オランダにおける議院内閣制の成立」『日蘭学会会誌』第33巻1号を公表した。本稿において、オランダの事例を中心に、ヨーロッパの比較の観点から、二元的議会制から議院内閣制への移行を検討し、その中で自由主義勢力が果たした、エリート主義的な側面を明るみにした。すなわち、自由主義勢力は、君主の持つ執行権を容認し、あるいは維持すべきであると積極的にとらえていたのであり、時には議院内閣制化を抑制する働きも持ったのである。その後の研究の進捗状況としては、19世紀自由主義勢力の影響のもとその基礎が構築された現在のオランダの政治制度が持つ非議院内閣制的な側面、すなわち、執行府と立法府とが事実上それぞれ自律的に行動するという側面(二元主義的政治慣行)についての研究を行っている。その成果は、2009年9月に公表される予定である。本年度はそれに加えて、日本の自由主義の論客であった吉野作造が、第一次世界大戦中に東京大学法学部で行った講義を、当時の学生、赤松克麿らのノートから翻刻し、検討する研究会に参加した。その成果は『国家学会雑誌』に「吉野作造講義録」として連載中である。吉野作造が、その政治論説の基礎として、フランス革命以来のヨーロッパの政治的展開に肉薄し、政治史的な検討を重ねた様子を詳細に知ることができたのは、日本におけるヨーロッパ政治史研究の源流をたどる上で貴重であった。また、さまざまな年度の講義録が存在することによって、吉野作造がさまざまな具体的事実の解釈につき、重点が変化していく跡をたどることもできる。これらの成果、特に後者に関しては、2009年6月に『国家学会雑誌』の解題で公表される予定である。
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Research Products
(3 results)