2008 Fiscal Year Annual Research Report
親密性の変容と家族の現代的展開-近現代イギリスの法制度とその社会的背景を中心に-
Project/Area Number |
08J08984
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 恵子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セクシュアリティ / ジェンダー / イギリス社会史 / 親密性 / 家族 / 歴史社会学 / イギリス文化論 / 社会問題 |
Research Abstract |
本年度は、英国国立公文書館やロンドン大学図書館で未公刊の資料の収集、およびその分析を行った。その成果は以下のとおりである。 1学会・研究会での発表 (1)タィア学会において、「『猥褻』と性愛のあいだ-20世紀転換期イギリスにおける女同士の親密な関係をめぐる一考察-」というタイトルのもと、イギリスの歴史上、一度も社会的問題化されたことのない女同士の親密性が、20世紀転換期に「同性愛」という概念のもと、可視化された過程を歴史社会学的に検証した。本報告では、「同性愛」に対してイギリス社会が向けるまなざしの変容を、法を軸に歴史的に跡付けることによって、現在的な「家族」の意味や親密性のありようを捉える視角を提示するとともに、現在のわれわれが自明とする性の認識形態の歴史的固有性を指摘した。 (2)「歴史と人間」学会において、「『同性愛』は犯罪だったのか?-20世紀転換期イギリスにおける『同性愛』概念の検討-」というタイトルのもと、「同性愛」が20世紀転換期イギリスにおいて、いかなる観点から問題化されたのか、そしてそれはどのような効果と意味を持つのか、を事例に歴史社会学的に検討し、日本の現状への示唆を示した。 (3)同志社大学人文科学研究所第6研究班研究会において、「猥褻から性愛へ-近現代イギリスにおける性の歴史社会学に向けて-」というタイトルのもと、近現代イギリスにおける「同性愛」の犯罪化から「同性婚」の合法化への過程を歴史社会学的に検証した。本報告では、性とジェンダーが複雑に絡まり合いながら、近代的な性へのまなざしが形成され、その過程において「同性愛」が「異物」として社会の内部に取り入れられる軌跡を、異性愛規範の生成とその現代的展開という観点から考察した。 2雑誌論文(投稿中・掲載予定) 『大原社会問題研究所雑誌』において、「英国における「ワーク・ライフ・バランス」とその理念-ジェンダー平等施策との関連を中心に-」というタイトルのもと、イギリスにおける「仕事と家庭の両立」の現状と動向を確認するとともに、「ワーク・ライフ・バランス」という社会構想を支える理念がどのように発展し、それはどのような「家族」や性のありかたを前提としたものなのか、を歴史社会学的に考察した。 上記の作業をとおして、本研究の意義および本研究が今後取り組んでゆくべき課題、収集すべき資料などを、あらためて確認することができた。
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Research Products
(2 results)