2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベイズ推定による脳内異種情報統合のモデル化および推定計算の神経機構に関する研究
Project/Area Number |
08J08988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 好幸 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベイズ推定 / 視覚的特徴結合 / 視覚的注意 / 適応現象 / Bayesian calibration / lag adaptation / 結合錯誤 / 計算論的神経科学 |
Research Abstract |
本年度はまず,情報の同一源性を考慮したベイズモデルにより,視覚的特徴結合を対象に研究を行った.特徴結合錯誤の生起が物体定位に及ぼす影響についての過去の実験結果の定量的性質がこのモデルにより再現されることを明らかにした.この結果は視覚的特徴結合においても同一源性が本質的に重要な要素であることを明確に示しており,今後の視覚的特徴結合の研究の方向性に対し重要な示唆を与えるものである. また,視覚的特徴結合において大事な役割を担っているといわれる注意をベイズモデルに統一的に取り入れることで,統計学的知覚モデルにおける注意の計算論的意義を研究した.尤度関数(解像度上昇)と事前確率分布への影響として,ベイズ推定に注意を二種類の取り入れ方で取り入れ,数値計算を行った.その結果,前者では多くの場合に結合錯誤率が下がるのに対し,後者ではパラメータの値により結合錯誤率が下がる場合と上がる場合の両方があることを発見した.この結果は一見矛盾した複数の結果が得られている実験的事実とも合致していて,注意と視覚的特徴結合の両方の意義・性質のより深い理解につながりうる発見である. また,適応現象についての研究も行った.近年別々の研究によって,ベイズモデルにおける尤度関数と事前確率の獲得がそれぞれ逆方法の適応を起こすことが示されてきていた.そこで,ベイズモデルにおける尤度関数と事前確率に対する適応を統一的に考慮したモデルを考案し,二つのタイプの適応現象が生起するためのパラメータ条件を解析的に導出した.さらに,適応にとって重要なパラメータの意味を明確にするために,適応のダイナミックベイジアンネットワークモデルを考案し,適応のタイプを決める条件をより明確にした.これは適応現象の計算論的意義の理解や,今後の理論・実験的研究の礎となりうる重要な成果である.
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Research Products
(1 results)