2008 Fiscal Year Annual Research Report
自立のための日本帰属-沖縄・エスノナショナリズム運動としての「復帰」-
Project/Area Number |
08J09034
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上地 聡子 Waseda University, 政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 帰属議論 / 復帰 / 信託統治 / 租借地 / 在京沖縄人 / 米軍基地 / 沖縄人コミュニティ / 疎開 |
Research Abstract |
平成20年度は、戦後数年間の沖縄の帰属意識を明らかにする目的のもと、資料調査を行った。 (1)福岡で1952年まで発行されていた「沖縄新民報」および鹿児島で発行されていた「新沖縄」という2つのメディアの読み込みを行い、当時の帰属意識が印刷媒体にどのように表われているかを調べた。その結果、沖縄以外の沖縄人コミュニティにおいて、帰属に関する議論や意思表明が積極的に行われていなかったことが明らかとなる一方、九州における疎開者や戦前からの沖縄人社会の状況について知見を深めることができ、また帰属の定まらない立場を表現する間接的な言い回し定型フレーズが流用されていたことが発見された。これらは、検閲や疎開による生活苦といった限られた条件の中で帰属という問題がどのように認識されていたのかを知る重要な手がかりである。沖縄外のメディアを精査することによって、これまで明らかにされていなかった沖縄と本土間の情報や物流の実態についても一端が明らかとなった。 (2)沖縄と本土側の「復帰」主張の差異について調査を行った。沖縄地元紙で展開された帰属議論から「復帰」を支持した言説を沖縄と本土(主として東京)に分けて分析し、双方の「復帰後」の沖縄イメージに微妙な差異があることを明らかにした。行政的な「復帰」を第一とし、米軍の駐留継続を容認する傾向にあった東京側に対して、沖縄側には将来の基地の処遇に対する言及が殆どみられず、社会の「正常化」の契機として「復帰」がみなされていた可能性が浮かび上がった。 (3)沖縄側で国連信託統治論を展開していた池宮城秀意の思想を探るため、未発表の原稿も含めたテキストの収集に当たった。本格的な分析はこれからであるが、1950年代前後において沖縄が抱いていた国際社会や国連に対するイメージ、および沖縄知識人の沖縄・セルフイメージを明らかにする上で重要な資料であると考えられる。
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Research Products
(1 results)