2008 Fiscal Year Annual Research Report
自然淘汰の影響を受けたNK細胞受容体遺伝子多型の網羅的探索およびマラリアとの関連
Project/Area Number |
08J09041
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平安 恒幸 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | マラリア / NK細胞 / KIR / HLA / 自然選択 |
Research Abstract |
Human Leukocyte Antigen(HLA)クラスI遺伝子はヒトゲノム中でもっとも遺伝的多様性に富んでおり、自然選択が働いた遺伝子の代表である。一方で、Killer Immunoglobulin-like Receptor(KIR)遺伝子はヒトNK細胞受容体の中で重要な役割を果たしており、HLAクラスIをリガンドとする。そこで、本研究ではまず自然選択の影響を受けた遺伝子として重要なHLAクラスI多型をKIRリガンドの観点からマラリア重症化との関連を調べた。ミャンマー国境に近いタイ北西部のタイ人軽症マラリア203名、非脳性重症マラリア165名、脳性マラリア109名について、HLA-A、HLA-B、HLA-C遺伝子型を決定したところ、KIRリガンドHLA-C1が脳性マラリアと有意に関連を示すことが明らかとなった(軽症マラリアと脳性マラリアのオッズ比:7.51、P値:0.001、非脳性重症マラリアと脳性マラリアのオッズ比:6.55、P値:0.004)。HLA-C1ホモ接合体由来のNK細胞はHLA-C2ホモ接合体由来のNK細胞よりもインフルエンザAウィルス感染細胞に対して反応性が強いことが報告されていることから(J Clin Invest118:1017-1026,2008)、HLA-C1陽性者ではマラリア原虫感染細胞に対するNK細胞の反応性が強くIFN-γが高発現することにより脳内の接着分子が発現誘導し感染赤血球が脳の細小血管に閉塞することで脳性マラリアの発症につながるのではないかと推察された。 今年度は、自然選択を受けた遺伝子として重要なHLAクラスIをNK細胞受容体であるKIRのリガンドという観点から調べたが、KIR遺伝子も遺伝的多様性に富んでいるので、来年度はKIR遺伝子多型を調べ、今年度見出された関連との関係性を調べる予定である。
|