2008 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βの細胞応答に関与するmicroRNAの同定とその機能解析
Project/Area Number |
08J09115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白木原 琢哉 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | TGF-β / EMT / microRNA / FGF2 / 線維芽細胞 / 筋線維芽細胞 / δEF1 / Erk |
Research Abstract |
研究開始当初はTGF-β(Transforming Growth Factor β)の細胞応答に関与するmicroRNAを同定することを目的とし、TGF-β刺激で誘導される種々の細胞応答の中からEMT(Epithelial to Mesenchymal Transition;上皮-間葉移行)に着目した。EMT獲得機構の解析を行う中で、本研究者らはTGF-βの単独刺激時とさらにFGFシグナルを加えた時とで細胞形態や機能に顕著な差異が認められることを新規に見出し、microRNAの同定と同時並行してEMT獲得に対するシグナルクロストークの解明を試みた。 EMT獲得機構に関わる新規microRNAの同定は、ルシフェラーゼアッセイの実験系を利用したクローニングベクターの作製やmicroRNAのクローニングを予定通りに行った。ところが、miR-200ファミリーというTGF-β誘導性EMTに関わるmicroRNAの報告が先駆けて複数の研究室から報告されてしまったことから(Gregory et al.,Nature Cell Biology,2008,10,593-601.他)一旦実験の進行を停止することにした。 microRNAの同定と並行して研究を進めたTGF-βとFGFシグナルのクロストークに関しては、EMT獲得後の細胞が筋線維芽細胞様細胞への分化転換する過程をFGFシグナルが阻止していること、FGFシグナルの下流ではErk経路が重要であること、さらに筋線維芽細胞様細胞への分化転換にはδEF1という転写因子が必須であることなどを見出した。筋線維芽細胞の機能としては張力の増大、I型コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生などが知られており、線維芽細胞とは形態的にも機能的にも大きく異なる。本研究で解析した上皮細胞由来の筋線維芽細胞様細胞と線維芽細胞様細胞では、細胞運動能や細胞外基質分解能などの機能に顕著な違いが認められるため、これらの細胞の癌微小環境への影響を調べるために三次元培養を進行している。上皮細胞への持続的なTGF-β刺激によるEMT獲得細胞が最終的には筋線維芽細胞まで分化転換するという今回の研究成果は組織工学や創傷治癒に対する創薬の観点からも極めて意義深いと言えるため、本研究成果を現在投稿準備中である。
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Research Products
(5 results)