2009 Fiscal Year Annual Research Report
静電相互作用を利用した球状錯体内部へのアニオン集積とその反応
Project/Area Number |
08J09201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 貴 The University of Tokyo, 大学院・工学系系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己組織化 / DNA / 水素結合 / ナノ粒子 |
Research Abstract |
私は昨年度より、高い機能性を有するアニオン性分子としてDNAに着目し、その集積化を行うことを考えて研究を立ち上げた。近年、金ナノ粒子の表面にDNAを修飾することで、相補的なDNA鎖の認識や結晶性材料の合成を行う研究が注目されているが、ナノ粒子の大きさや表面に修飾されるDNAの数を精密に制御できないという問題がある。厳密に構造制御されたナノ粒子の表面を定まった数のDNAで被覆できれば、その認識能を精密制御することができる。そこで私は、球状錯体の自己集合を利用すれば、一義的な骨格を持つナノ粒子の表面に決まった数のDNA鎖を集積することが可能になると考えた。折れ曲がり型配位子の外面にDNA鎖を連結し、パラジウム(II)イオンと錯形成させることにより、直径3.5nmの球状錯体表面を24本のDNA鎖で被覆できる。 昨年度私は、表面に1塩基、2塩基のオリゴチミジンを24本集積した球状錯体の構築に成功している。今年度はまず、錯体表面でのさらに強い分子認識を目指し、3塩基のオリゴヌクレオチドを集積した球状錯体の構築を行った。折れ曲がり配位子の外側にチミン3塩基からなるオリゴヌクレオチドを導入した配位子を合成し、パラジウム(II)イオンと錯形成させることで、目的の球状錯体を構築することができた。その構造は、1H NMRおよびDOSY NMR測定により明らかにした。 これまでの成果により、表面に1-3塩基のオリゴチミジンを24本集積した球状錯体を得ることができた。そこで、得られた3種類の錯体を用いて、相補配列であるオリゴアデノシンの配列認識を試みた。チミン3塩基の錯体に対して、アデニン3塩基のトリヌクレオチドをDMSO:CHC13=2:1の条件下加えたところ、チミンとアデニンの間に水素結合対が形成されていることが1H NMRによる解析によってわかった。チミン1塩基、2塩基の場合にはこの条件では水素結合対の形成は見られなかったことから、オリゴヌクレオチドを伸長することによって配列認識能が向上したことがわかった。極性の低いDMSO:CHC13=4:1の条件下では、1塩基、2塩基の錯体においても弱いながら水素結合対の形成が見られた。さらにこの条件下、チミンに対するミスマッチ塩基であるシトシン、グアニンの誘導体をチミン1塩基の球状錯体に対してそれぞれ加えたところ、水素結合対の形成はほとんど見られなかった。したがって、この錯体は相補塩基を選択的に認識して水素結合を形成することが明らかになった。
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Research Products
(3 results)