2009 Fiscal Year Annual Research Report
他者存在がストレス反応に与える影響-NIRSを用いたニューロイメージング研究
Project/Area Number |
08J09209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯谷 悠子 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | NIRS / 他者認知 / 視線知覚 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の結果を踏まえ、他者との視線を用いたコミュニケーションの基本となる視線感受の脳内処理についてのモデルを構築するため、新たな実験を行った。 本研究は,人の視線感受性と性格特性との関連を検証する実験1,性格特性における視線感受に対する脳活動差異を検証する実験2から成る。実験1では視線方向判断課題を用いた視線感受性の計測と4種類の質問紙調査を実施した。実験2の対象者は実験1への参加者から男女5名ずつ,視線感受性の高低を用いて3群に分け,光トポグラフィ装置を用いて視線刺激に対する1-back課題時の前頭葉活動を計測した。 性格傾向と視線感受性との関連について自己範囲指標と脳活動信号を用いて検討した。神経症傾向が強い男性は自己範囲が狭いという特徴が示され,他者の視線が自分を向いている刺激を使った1-back課題に対し,刺激開始直後から左前頭葉よりも右前頭葉で強い活動を示した。神経症傾向が強い男性は,視線感受性が高いため,他者の視線が自分を向いているか否かを素早く精密に処理していると考えられる。また,視線刺激の1-bcak課題はワーキングメモリ課題による活動を促すため,左・右前頭葉(46野付近)で活動が観測されたが,特に左前頭葉よりも右前頭葉で強い活動が観測された。本結果は,視線感受の脳内処理には右前頭葉が関与することを示唆している。以上より,神経症傾向が強い人は,視線情報を素早く検出し処理する特徴を持っており,これは自己に対する脅威の状況を素早く判断するためであると推測する。 本研究は,性格傾向と視線感受性との関連を脳活動計測により検討した最初の研究である。神経症傾向の強い男性は視線感受性が高く,右前頭葉において特異的な脳活動を示すことが明らかになった。また自己範囲を指標として個人の視線感受性が測定可能であること,視線感受性による脳活動差異を光トポグラフィにより測定可能であることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)