Research Abstract |
本年度は,空間型操作を支援するポストWIMP型インタフェースの内,実世界と同様の感覚で実物体に対して仮想的な描画が可能な筆型デバイスの設計と開発を行った. まずは,「入力の強弱」を線の太さに対応付けることによって筆らしい線を描画することを試みた,ここでは筆を描画面に押し付けるカ,描画面からの距離,描画面に対する傾きなど,6種類の入力方式を提案し,実物の丸筆を用いて試作デバイスを作成した.試作したデバイスと提案手法については,研究室内で評価実験を行い,入力の強弱の取得方法や,入力から線の強弱に反映する式の妥当性,有用性を評価した. 改良と分析を進めるうち,筆らしい線を描くために必要な要素は強弱だけではないことが分かった.そこで本研究では,筆を描画面に置いたときに現れる形状「フットプリント」と,それを筆の軌跡上に並べることにより現れる「ストローク」に着目した.フットプリントの形状を決定するためには「穂先のしなり量・方向」が重要であると考え,これらを取得するためにアナログスティックコントローラをデバイスの軸に内蔵した.これにより,より実世界の筆らしい描線を描くことに成功した.また,筆型デバイスでは,前年度までに加工用デバイスの開発過程で得られた知見を生かし,丸筆,平筆,面相筆といった筆の細かい種類の切り替えを,用途によって穂先を付け替えることで実現した. ここまでの成果は2009年10月にヒューマンインタフェース分野ではもっとも著名な会議のひとつであるUIST,および12月にCG分野では屈指の規模を誇る国際会議SIGGRAPHのアジア版であるSIGGRAPH ASIA 2009などで技術展示発表を行い,広くユーザからの意見を集めた,その結果,ペンタブレットには無い,筆のダイナミックな触感が多くの体験者の好評を得た.また,直接操作による作業の容易さも広く受け入れられた.
|