2010 Fiscal Year Annual Research Report
記憶形成のメカニズム解明の基盤となるショウジョウバエ嗅覚記憶中枢の発生機序の解明
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08J09243
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 崇志 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ショウジョウバエ / 神経発生 / アクチン細胞骨格 |
Research Abstract |
【背景と目的】キノコ体はショウジョウバエの脳における嗅覚学習記憶の中枢である。脳高次機能を担う神経回路の構築機構の理解という点から、その形態形成を制御する因子の機能を解析することは重要である。本研究ではキノコ体で発現する遺伝子sickieに着目した。変異体の表現型の解析を端緒に、中枢神経系の発生を制御する因子群との相互作用を調べることで、分子機能の解明を目指した。 【研究成果】sickieのmRNAは神経に分化して間もない細胞集団で発現し、Sickieは神経軸索に一過的に顕著に検出された。RNAi阻害を誘導したキノコ体では、神経軸索束の形成異常が観察された。遺伝子欠失変異体でも同様に、キノコ体軸索束の形成が阻害される表現型が見られた。変異体条件下で、キノコ体特異的にsickieを発現させると、軸索束の形成異常がレスキューされた。次に、Sickieはアクチン結合性のタンパクに保存されているドメインをもつことから、アクチン重合を制御する他因子との相互作用の検証を行った。線虫のsickieホモログと結合することが既知なアクチン制御因子としてabiが知られていたため、その表現型を解析した。ショウジョウバエのabi変異体では軸索束が過剰に長く、sickieとは逆の表現型を示した。この異常はsickieとabiのヘテロ2重変異体においては抑制された。さらに、sickieの表現型はabiを同時に強制発現することで相乗的に亢進したことから、これらの因子は遺伝学的に相互作用することが示唆された。以上より、sickieはキノコ体神経の軸索形成に必要であり、アクチン重合のダイナミクスを制御する因子と相互作用することで、アクチン細胞骨格の制御に関わり、中枢神経系の軸索形成に寄与している可能性がある。
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Research Products
(3 results)