2009 Fiscal Year Annual Research Report
貝類化石を用いた捕食史の進化古生態学的研究-同位体科学による古食性解析法の確立-
Project/Area Number |
08J09336
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
筒井 牧子 (石川 牧子) Waseda University, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 古生態学 / 海産無脊椎動物 / 食物連鎖 |
Research Abstract |
本研究の目的は、化石に残る化学的指標(窒素および炭素同位体比)の解析から絶滅生物群の食性を推定する手法を開発することにより、捕食者として重要な肉食巻貝(タマガイ)の進化史を探ることである。 本年度は、海洋研究開発機構のガスクロマトグラフ/燃焼/質量分析計(GC/C/IRMS)を用いて生体内のアミノ酸(グルタミン酸とフェニルアラニン)の窒素同位体比を測定・比較し、栄養段階を推定することを目的とした。グルタミン酸とフェニルアラニンは代謝反応が異なり、前者は^<15>Nの濃縮が大きいが後者はほとんどない。このことを利用し、同一個体内のアミノ酸の同位体比を測定することにより栄養段階の推定が可能である。この手法により肉食巻貝(タマガイ)と草食巻貝(モクレンタマガイ)の軟体部と殻内有機物を測定した。軟体部と殻内有機物から算出された栄養段階は肉食巻貝でそれぞれ2.3と2.2、草食巻貝ではそれぞれ1.7と1.8とほぼ一致し、本手法を用いて化石として保存される可能性のある殻内有機物から栄養段階を推定できる根拠を得た。しかし、二次~高次消費者(栄養段階=3以上)であるはずの肉食巻貝の栄養段階が低く算出された。そこで、肉食巻貝の捕食行動の観察を行なうとともに、肉食巻貝が一次消費者より直接栄養を得ていないことを確かめるため、^<13>Cでラベルした微細藻類中で飼育実験を行った。コントロールとして導入したろ過食二枚貝が数週間の飼育期間中に微細藻類から栄養を得て^<13>Cラベルされたのに対し、肉食巻貝では^<13>Cの取り込みは見られなかった。脊椎動物では窒素同位体比が組織ごとに異なるという知見が蓄積されている。軟体動物においても窒素同位体比が組織ごとに異なり、それらの取り込みにより窒素同位体比が筋肉から予想される栄養段階の推定値よりも低くなっている可能性も示唆される。
|
Research Products
(2 results)