2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 光 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 郵便貯金 / 産業組合 / 大蔵省預金部 / Micro finance / 地域経済 / 地域社会 / 近代化 |
Research Abstract |
工業化と持続的な経済発展はいかなる条件下で達成できるのか、また工業化はどのような影響を人々の生活に及ぼすのか、その相互関係はどのようなものかを、アジア最初の工業化国である日本の歴史的経験から検討している。 日本の工業化では近代化に必要な資金供給は、現在の途上国に多く見られるような海外資本の導入ではなく、貯蓄率の向上によって主に担われた。それは富裕層の貯蓄によってだけでなく、個人零細貯蓄の集積によっても支えられていた。大衆資本が郵便貯金・地域銀行・産業組合(現在の農協)に蓄積された事は、その地域金融機関や大蔵省預金部を通じた地方自治体等の活動に繋がる形で、地域経済の振興と地域社会における様々なインフラストラクチャーの整備を果たした。 2009年度は、郵便貯金の大衆的確立過程のミクロレベルの分析を整理する所から始まり、そこでは中央政府・地方自治体.地域共同体・小学校・地元郵便局が、郵便貯金をはじめとした個人零細貯蓄の形成にあたって、どのような関わり合いを持っていたのかを具体的に明らかにした。 同時に、伝統的地域共同体を近代的地域共同体として再編する中で形成された個人零細貯蓄が、どのような形で地域経済と社会に還流され、その経済発展を促したのかについて具体的な調査を開始した。郵便貯金の場合その資金運用は、19世紀末より大蔵省預金部によって決定されており、本年度は主にその制度的起源を考察した。なお預金部資金が地域経済に還元されるにあたっては、日本勧業銀行や各県農工銀行も、大きな役割を果たしており、それらに関しても調査を行っている。 また、貯蓄率が向上する20世紀転換期頃から日本全国で発達した産業組合は、そのほとんどが少額金融機関だった。本研究は1903年に設立された長野県和村(現東御市内)の産業組合を主な事例として調査し、産業組合が地域経済と社会に及ぼした具体的な影響を分析している。
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Research Products
(4 results)