2008 Fiscal Year Annual Research Report
擬ギャップと高温超伝導発現の関係〜面外元素置換による系統的な研究〜
Project/Area Number |
08J09347
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡田 佳憲 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 擬ギャップ / Bi2Sr2-xRxCuOy |
Research Abstract |
高温超伝導は"擬ギャップ相"と呼ばれる相が存在するなかで発現する。この擬ギャップ相の存在は従来の単純金属超伝導体には無く、擬ギャップ相が高温超伝導発現に及ぼす影響を理解することが高温超伝導発現のモデルを構築するための最重要課題の一つとされてきた。前年度までに、"擬ギャップ相"が高温超伝導と競合する関係にあることを明らかにした。本年度は、そのような競合する擬ギャップ相が存在する特徴的な環境下で出現する超伝導の転移温度(Tc)は何によって支配されているかを調べるため、Tcが異なる試料の角度分解光電子分光(ARPES)測定を行った。 同一キャリア量でTcが異なるLa-Bi2201-OP(Tc=33K)とEu-Bi2201-OP(Tc=18K)の超伝導ギャップの温度変化を詳細に調べることで、Tcと対応するエネルギースケールを調べた。その結果、銅酸化物高温超伝導体では超伝導を抑制する擬ギャップの影響を免れたフェルミ面上の一部(フェルミアーク)に存在する電子のみが超伝導を担うことを明らかにした。 擬ギャップが形成されるのは恐らく、系がモット絶縁体近傍に位置するためだと思われるが、モット絶縁体近傍で発現する銅酸化物の超伝導は擬ギャップと超伝導の共存が避けられない宿命にある。本年度の成果によって、擬ギャップ形成が超伝導を担うフェルミ面上の電子を部分的に消失させることで超伝導を抑制することを実験的に示すことで、銅酸化物高温超伝導体における擬ギャップ形成が超伝導発現に及ぼす影響を明らかにしたといえる。
|
Research Products
(4 results)