2010 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体型ATP合成酵素の回転を酸化・還元制御する分子機構の解明
Project/Area Number |
08J09390
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 流星 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 酸化・還元制御 / レドックス制御 / 葉緑体ATP合成酵素 / 一分子回転観察 |
Research Abstract |
本申請研究の目的は、植物葉緑体型ATP合成酵素に特徴的な酸化・還元調節の分子機構を明らかにすることである。特に、酸化時の阻害機構に注目すると、酵素の回転軸に存在するレドックススイッチが酸化されてジスルフィド結合を形成し、それによって誘導される構造変化が引き金となって物理的な回転阻害が起こることが考えられる。そこで、この回転阻害が起こる角度を正確に求めるためには、回転を可視化した時の角度分解能を向上する必要があった。初年度は、シアノバクテリア由来のATP合成酵素に新たに導入したレドックス制御領域の大きさ及び回転プローブを固定するシステインの位置の探索によって、これらの条件をクリアした。得られた酵素変異体を用いて、倒立型位相差顕微鏡で回転を観察した結果、酸化条件ではADP阻害と考えられる長い回転停止の停止時間が、還元条件の時よりもより長くなっていたことが分かった。そして酸化条件において停止角度の特定に成功し、長い回転停止がATP結合の位置から約80゜ずれた位置であることを明らかにした。この80゜ずれた位置は、ATP合成酵素の回転時に特徴的に見られるいわゆるADP阻害の位置の近傍である。ADP阻害との関係をより詳しく調べるため、ADP阻害を解除する試薬LDAOを用いて、酸化・還元制御時のATP加水分解活性を測定した。その結果、ADP阻害が解除されるにつれ酸化・還元制御の効率が低下することが分かった。この結果を回転観察の結果と会わせ、「植物葉緑体型ATP合成酵素の持つ酸化・還元制御は、ATP合成酵素が本来持つADP阻害の度合いを調整し活性を制御する」ということが分かった。
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