Research Abstract |
<研究目的>溶融バルク超伝導体(バルク体)は,磁場中で冷却することで強力な磁石となる.バルク体を用いることで,10Tを超える磁場を,卓上に乗る程度の小型冷凍機での冷却により供給できるため,巨大な冷却機構を必要とする超伝導電磁石に比べ,非常に使い勝手の良い磁場源となる.バルク体の発生磁場がさらに強力になれば,更なる用途の拡大が見込まれるが,捕捉磁場の勾配は,超伝導体内に流すことのできる臨界電流密度(J_c)に比例するため,バルク体のJ_cのさらなる上昇が求められている.近年,バルク体中の超伝導相であるREBa_2Cu_3O_y(RE123)へ微量の元素置換を行うことで,J_cが上昇することが報告された.そのため本研究では,高J_c化を目的として溶融バルク超伝導体への元素置換効果を,元素が置換されるサイトに注目して系統的に調べ,その特性に関して議論した. <研究結果>RE123相中のRE,Ba,Cu(1),Cu(2)各サイトヘ,様々な量の元素置換を系統的に行い,J_c,ピン・ポテンシャルなどを測定した.その結果,元素置換効果は二つのタイプに分類できる事が分かった.一つは,弱超伝導相が形成されることでピニング点が増加するタイプの元素置換(Cu(1),Cu(2)サイト)であり,他方は,置換により超伝導相が改質されることで,ピン・ポテンシャルが上昇するタイプ(RE,Baサイト)の元素置換である.これらそれぞれ単独の元素置換でもJ_cは上昇したが,上記の二つのタイプめ元素を同時に添加することで,単独添加を上回るJ_cを持つ試料の作製に成功した.このようなJ_cの上昇はバルク体の磁場応用における発生磁場の向上につながるため,今後,溶融バルク超伝導体がさらに強力な磁場源として発展するための新たな指針を示したと言える.
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