2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09492
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
堀田 義太郎 Ritsumeikan University, 先端総合学術研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケア / 分配的正義 / ベーシック・インカム / 社会政策 / 家族ケアモデル |
Research Abstract |
1.生命倫理学をめぐる研究 第一に、年度前半には重度難病患者と安楽死をめぐる議論の検討結果を国際学会で報告し、年度後半には生殖補助医療技術の活用をめぐって生じている困難事例について分析を行い国内学会で報告した。また、所属組織のGCOEセンター研究報告書の二巻の編集作業を行った。うち一冊では、障害者の選択的中絶をめぐる従来の擁護論・批判論双方の問題点の指摘を通して、自由に対する制約の質量と義務の強度との相関性という分析枠組みの重要性を確認し、倫理学的分析への適用可能性を提示した。生殖補助医療技術をめぐる困難事例の分析では、客観的な負担の質量に比例して主観的な自己決定の真摯性への要求が高まるという構造を再確認した。これらの研究は、ケア活動の社会的分担方式の意義と限界を明確化する事例としてケア労働のジェンダー分析に接続される。 2.ケア労働分担をめぐる社会制度の研究 第二に、ケア労働の社会的分担という観点からベーシック・インカム論の枠組みを批判的に検討した。ベーシック・インカム論が、ケア労働に対する既存の社会的評価と家族モデルを前提にした分業体制を前提にしていることを明確化し、その限界を指摘した。また、ケア労働の分担に関して、現在の日本の障害者介助労働運動の中心的担い手を迎えて研究会を企画し、障害者自立生活運動と介助労働をめぐる具体的な問題について議論を行い、その成果を編著としてGCOEセンター報告書にまとめた。 この研究成果はケア労働の社会的分担に対する視角をとくに分配的正義論の文脈で精緻化するための作業の一環として位置づけられており、本研究課題遂行上きわめて重要な意義をもつ。
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Research Products
(7 results)