2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09493
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
渡部 浩之 Iwate University, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生殖工学 / 顕微授精 / 雄性生殖胚 |
Research Abstract |
【目的】ヒトのような卵子の利用が困難な種の胚性幹細胞(ES細胞)の作出には異種卵細胞質を利用した雄性生殖胚の活用が有効な方法の一つであると考えられる。本年度では、雄性生殖胚作出に使用する顕微授精技術の安全性の検討とマウス卵子に異種精子を注入したときの受精現象を観察した。 【方法】受精能獲得や先体反応を誘起する精子処理[Methyl-β-cyclodextrin、 Lysolecithin(LL)、 Triton X-100]および人為的にプロタミン間S-S結合を脆弱化するDithiothreitol(DTT)処理を施した精子をマウス卵子に顕微注入し、その後の胚発生を観察した。また各発育ステージにおける胚の染色体正常性も観察した。さらにマウス卵子を電気融合させ、体積を増加させた卵子(2倍卵-10倍卵)を作製し、これにウシ、ヒツジ、ブタおよびイヌ精子を顕微注入後、受精率を検討した。【結果および考察】精子処理は精子染色体異常を誘起したが、受精率、胚盤胞への発生率には影響しなかった。一方、60分間DTT処理した区では、作出された多くの胚盤胞で染色体異常を有しており、胎仔への発生率も低下した。また、LL処理した区では胎仔への発生率が向上した。異種精子をマウス卵子に注入したとき、高い割合で卵子が変形し受精現象の進行が停止した。融合卵を使用することで、この変形は抑制され受精現象の進行が確認された。特にウシ、ヒツジおよびイヌ精子では3倍卵に注入することで、ほぼ100%の割合で卵子の変形を抑えることができた。以上の結果から、精子処理は精子染色体異常を誘起するが、その異常は胚盤胞までの発生には影響しないこと、先体酵素の除去が胚発育を向上させることが明らかとなった。さらにマウス卵子-異種精子間の雄性生殖胚作出には、マウス卵子の体積増加が必要不可欠であることが示唆された。
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Research Products
(4 results)