Research Abstract |
平成20年度の結果から,現行の観察装置では表面吸着層の速度過程解析に限界があることが明らかになったため,表面吸着層の積極的利用として,有機金属気相成長における微小領域選択成長を用いたSi基板上InGaAsの横方向成長に取り組んでいる.成長前の基板加熱条件としてキャリアガスのH_2のみの供給,As原料供給,P原料供給のそれぞれについて,成長温度までの加熱または高温加熱を比較した.H_2供給下加熱では多種多量の不純物が吸着しており,特にCの吸着によりそれらを核として各成長領域に多数のInAs核が発生していた,As原料供給下加熱では0が多量に吸着しており,InAs核発生が阻害されていた.P原料供給下では特に高温加熱の場合にC・Oの吸着がともに抑制されており,InAs核発生も良好であった.そこで成長前の基板加熱にはP原料供給下高温加熱を用いることとし,その後の多段階成長の条件を最適化することで,InGaAs結晶の幅/高さ比が通常成長の11.4±10.6から18.2±7.2に向上し,横方向成長を促進するとともに均一性を向上させることに成功した. また,核発生および連続成長におけるGa組成の影響を考察した.成長初期の核密度および核形状はInAsとGaAsの違いに起因するものであり,GaAsの方がSiとの界面エネルギーおよび核発生の臨界エネルギーが小さいために,より接触角の小さい液滴状の核が多数発生しやすい,ただし,InGaAs成長では最初に凝集したGaAsを核としてInAsが凝集して核発生するため,核の組成はInAsに近くなる.連続成長では,InAsは等方的に,GaAsは異方的に成長することが知られており,本研究におけるInGaAsの横方向成長はGaAsの成長速度の異方性が発現したものである.しかし,低V/III比の条件下ではGaAs表面のAs被覆率の低下から成長速度の異方性が見られなくなるとともに積層欠陥の一種である回転双晶が消滅することも知られており,高Ga組成InGaAsで見られた幅/高さ比の低下および双晶消滅はInGaAs表面のAs被覆率の低下が原因である.
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