2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 智 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超対称性 / 暗黒物質 / LHC / 宇宙線 |
Research Abstract |
素粒子標準模型は現在までの高エネルギー物理の実験を非常によく記述する。しかし、標準模型は階層性問題などの理論的不満点や、その存在が確実視されている暗黒物質や暗黒エネルギーに対して何も述べていないなどの問題がある。そのため、標準模型を超えた物理を模索することは非常に重要である。そのような中、最も有望なものの一つに超対称性理論がある。私はこの理論の特に現象論的側面について研究を行った。 超対称性理論というのは重力子のスーパーパートナーであるグラビティーノの質量によってその性質が大きく異なってくる。私は特に宇宙論的に重要と考えられている 1.ニュートリノのように非常に軽い場合 2.標準模型のスーパーパートナーよりも少し軽い場合 3.標準模型のスーパーパートナーよりも非常に重い場合 の三つの場合の現象論的側面について研究を行った。以下でそれぞれの場合についての研究成果を述べる。 1. グラビティーノが非常に軽いとLHC実験において、光子やレプトンなどの特徴的なシグナルが期待される。これらのシグナルに加えて、損失運動量にも特徴的なシグナルがあることを示した。 2. グラビティーノの質量が軽いと長寿命の超対称性粒子の存在が予言される。LHC実験でそういった粒子が生成され、その粒子が物質と相互作用するといくらかの割合の粒子は検出器内で止まってしまう。それらの粒子の崩壊を検出が可能であり、それらの情報から、その粒子の寿命や質量などの性質が解明できることを示した。 3. グラビティーノが非常に重いと、大きな質量をもつ超対称性粒子が暗黒物質の候補になることが知られている。普通、暗黒物質は安定であると考えられているが、無限の寿命を持つ必要もない。私は共同研究者とともに非常に長いが有限の寿命を持つためのメカニズムを発見し、この暗黒物質の崩壊によって近年報告された宇宙線実験における異常現象を説明できることを示した。
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Research Products
(8 results)