2008 Fiscal Year Annual Research Report
中性子と高分解能X線構造解析によるタンパク質の水素原子を介した相互作用の解明
Project/Area Number |
08J09586
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 繁生 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛋白質中性子結晶構造解析 / 蛋白質X線結晶構造解析 / 低障壁水素結合 / Photoactive Yellow Protein / 光受容蛋白質 |
Research Abstract |
生命現象の素過程は化学反応であり、その反応には蛋白質や基質中の水素原子が直接関わっている。よって、蛋白質を中心とした生命現象を理解する上で、水素原子の果たす役割を明らかにすることは本質的である。本研究では光受容蛋白質Photoactive Yellow Protein(PYP)をモデル蛋白質として、中性子結晶構造解析、X線結晶構造解析を用いて水素原子位置を含めた立体構造を構築し、その構造をもとに蛋白質の機能発現機構における水素原子の役割を明らかにすることを目的としている。回折実験の結果、中性子/X線でそれぞれ分解能1.5/1.25Åのデータセットを得た。これまで蛋白質中の水素原子の位置決定には主に中性子結晶構造解析(N解析)が用いられてきたが、本研究ではより精度の高い水素原子位置を得るため、中性子データとX線データを併用する中性子/X線併用結晶構造解析法(N/X解析法)を開発した。N/X解析法の優位性を確かめるため、N解析法との比較を行ったところ、N解析では観測できなかった水素原子がN/X解析を行うことで観測できるようになった。また、信頼度因子においてもその優位性が確認された。N/X解析の結果、PYPの水素原子942個中819個(約87%)の水素原子位置を明らかにすることができた。この構造より、低障壁水素結合という特殊な水素結合が蛋白質中で形成されていることを初めて実証し、この結合がPYPの光反応において重要な役割を果たしていることを提唱した。また本研究結果により、これまで信じられてきたPYP暗状態のモデルが否定され、これまでに行われた実験結果を再検証する必要性が示された。このことはPYPだけにとどまらず、他の機能性蛋白質でも水素原子を含めた構造を決定しなければ、正しい機能メカニズムの理解には至らないことを意味している。
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Research Products
(2 results)