2008 Fiscal Year Annual Research Report
制限ナノ空間水における水素結合ネットワークの発達と,低温安定構造及びダイナミクス
Project/Area Number |
08J09631
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 啓介 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノ空間水 / ガラス転移 / 断熱法熱容量測定 / 固体NMR / 結晶性細孔 / 層状シリケート |
Research Abstract |
ナノメートルスケールに閉じ込めた水(ナノ空間水)が形成する水素結合ネットワークとダイナミクスを調べることを目的として,結晶性でかつ均一な1.5nmの細孔径をもつ[Ru(H_2bim)_3](TMA)20H_2Oの試料を東京理科大学田所准教授に作製していただき,断熱法による熱容量測定および自発的エンタルピー緩和速度の温度依存性を調べた.その結果,これまでに測定されたランダムな細孔壁を有するMCM-41メソポーラスシリカ細孔内の水とは異なる秩序化挙動とガラス転移挙動を見いだした.その結果は,ナノ空間水が界面付近のわずか1〜2分子層分で,界面に強く依存した構造を形成し,それより界面から離れた細孔内部領域に存在する水分子は,界面に依存しない水分子特有の四配位水素結合ネットワークを形成する傾向を有することを示唆する.より大きな径の細孔内では.バルクの低温過冷却水の異常性を特徴付ける水素結合構造の形成が期待され,その上うなナノ空間水の熱測定には大変興味がもたれる.また,ナノ空間水のダイナミクスを調べることを目的として,Stuttgart大学Klaus Muller教授のグループの協力により,界面水のみからなる層状シリケートNa-RUB-18内部に閉じ込められた水の固体^2H-NMR測定を行い,得られた線形スペクトルを水分子の回転運動からシミュレーションした.その結果,細孔壁近傍の水は水素結合ネットワークを介さずに,並進拡散運動していることが考えられ,界面水のダイナミクスについて重要な知見が得られた.これまでの研究結果との比較より,この水分子拡散運動は試料の特性である高いプロトン伝導性とも関連かおり,今後,熱測定と固体NMRを用いてマクロとミクロの両方の視点からナノ空間水を探究することは,学術的・応用的見地からも重要に位置づけられる.
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