2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09665
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 裕也 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学院研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 混合原子価 / 鉄錯体 / CV / 二コバルトカルボニル / ヘキサアリールベンゼン / ESR |
Research Abstract |
本年度は混合原子価種の機能化を目的として、二コバルトカルボニル種のπ配位を用いた混合原子価状態の制御、ヘキサアリールベンゼン骨格を有する多核鉄錯体の合成を行った。混合原子価状態の電子構造制御は、発光、磁性機能部位への電子構造変化を誘起できる可能性があり、自在な物性制御に向けて重要である。そこで、二鉄間の電子的相互作用および鉄上の電子密度制御を目的として、アルキン二鉄錯体に種々の二コバルトカルボニル種を配位させ、その電子的影響を調査した。混合原子価状態の電子的相互作用の指標となる均化定数K_cはコバルト配位により大きく変化した(49~1.1x10^6)ことから、コバルト配位が二鉄間の電子的相互作用を制御できる事が明らかとなった。また、混合原子価種のESRスペクトルからは、鉄中心に由来するgテンサーが観察される。コバルト種の配位に伴い、異方性パラメータΔgが大きくなることから、ラジカルカチオンの鉄原子の寄与が大きくなったと示唆される。以上の結果から、コバルト種のπ配位が混合原子価種の電子状態を制御できることを明らかにした。 機能の高集積化を目的として、ヘキサアリールベンゼン骨格を有する多核錯体の合成を行った。ヘキサアリールベンゼンの周辺芳香環は傾いた配向をとっており、π-π相互作用を介した電子的相互作用が期待でき、更に、最大六方向への機能化が可能である。オルト位、パラ位置換二核鉄錯体は周辺芳香環を持たない類縁錯体に比べて、良好な電子的相互作用を示し、ヘキサアリールベンゼン骨格が良好な架橋配位子となる事がわかった。さらに、ヘキサアリールベンゼン六核錯体の合成を行い、電気化学的測定を行った。ベンゼンおよびチオフェン誘導体共に、多段階に由来する酸化還元過程が観察され、金属の高集積化に伴う協同的な電子的相互作用を明らかにした。今後、ヘキサアリールベンゼンへ発光性金属錯体を導入する事で、多段階の酸化還元過程に応答する発光材料の開発が期待できる。
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Research Products
(4 results)