2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会的排除を助長する福祉政策 : アメリカのホームレス問題に着目して
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08J09706
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
野田 博也 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(PD) (00580721)
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Keywords | 「劣等処遇」 / アメリカ / 公的扶助 / 自由・自律の制約 |
Research Abstract |
社会的排除を市民権が剥奪された状態として理解すると、社会的排除を助長する福祉政策の古典的な実践を「劣等処遇」に求めることができる。今年度は、アメリカの代表的な公的扶助における「劣等処遇」の今日的な展開について研究を進めた。 1930年代以降のアメリカ公的扶助を事例として、「劣等処遇」原則の変容を考察した。「劣等処遇」(原則)は、就労自活が求められる貧困者への救貧策(公的扶助)の条件であり、「資本主義的私的生活原理」としての「自由・自律の側面」に制約を課すものである。救貧法体制以降の公的扶助の条件を構成する要素として、給付水準の充分性、有期制、給付方法としての給付形態(現金;現物;バウチャー)、能力活用、人的介入、ならびに条件の前提となる制度設計(アメリカでは範疇制の在り方)に着目し、諸条件の関係(組み合わせ)を考察した。 考察の結果、アメリカ公的扶助の範疇制では、単給の場合には給付水準の充分性は公式貧困線に達せず、また方法の面では事業ごとに異なる条件設定がなされていた。その一方、併給の場合には、給付水準の充分性は公式貧困線に達するケースもあるが、事業ごとに異なる条件が組み合わさることで「自由・自律の側面」への制約が強まる特徴があることなどを明らかにした。そして、最低限保障の在り方を検討するうえで、水準(量的側面)と方法(質的側面)をセットにして考察することの重要性を指摘した。
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