2010 Fiscal Year Annual Research Report
大質量星をプローブとした相対論的アウトフローの解明
Project/Area Number |
08J09716
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小高 裕和 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ガンマ線天文学 / X線天文学 / コンプトン望遠鏡 / ガンマ線連星 |
Research Abstract |
本研究では、次世代ガンマ線観測のための検出器システム開発と並行し、ガンマ線連星や大質量X線連星における物理現象、特に放射メカニズムの解明のため、天体モンテカルロシミュレータの開発を行ってきた。従来、球対称な形状や均一な密度、一様な温度などを仮定した単純化されたモデルにより観測データを解釈してきたが、実際の観測で得られる高分解能・高S/Nのデータから物理的な情報を引き出すためには、本来、天体の現実的な形状と物質の分布を考慮して放射輸送を解くことが必要である。今年度は、モンテカルロシミュレーションに基づいて放射輸送を解き、X線放射をモデル化する新しい計算の枠組みを完成させ、X線連星やガンマ線連星、銀河中心領域の分子雲などに適用することに成功した。このシミュレーションの枠組みを用いてすざく衛星による中性子星Vela X-1のデータに適用し、硬X線放射が降着流における逆コンプトン散乱により自然に説明できることを示した。また、分子雲のX線反射を利用した分子雲構造とX線フレアの診断法を提案した。これらのモデル化は分子雲の現実的な構造を考慮した上で複数回散乱を取り扱う必要があり、モンテカルロシミュレーション以外の手法では困難である。透過力の強い硬X線では鉄蛍光と全く異なる画像が得られ、分子雲の質量や構造のプローブとなることを初めて示した。この提案は近い将来実現する精密分光と硬X線撮像によって検証可能である。
|
Research Products
(2 results)