Research Abstract |
多岐にわたる実地盤問題に対して,地盤材料の構成モデルを軸とした初期値・境界値問題を解くことで,合理的な設計手法の選定ならびに安定予測が可能となる。この初期値・境界値問題を解く手法に関して,近年では対象とする実問題のスケールや変形量の大小に合わせて種々の解析手法が提案されている。しかしながら,そこで用いられる構成モデルは解析の信頼性を担う一方で,種々の地盤特性を十分に考慮することができない簡単な構成モデルが用いられている。そこで本研究では,実地盤を解析する上で重要となる(1)応力履歴に起因する土の誘導異方性,(2)自然堆積土に見られる土の構造,(3)乾湿による土の不飽和状態,これらの影響を考慮する構成モデルの開発を行い,それを導入した有限解析コードより地盤の総合的な変形・破壊予測手法の確立を目的とする。 前年度は一昨年度から継続して,三軸ならびに三主応力制御試験機を用いて,地盤材料の繰返し載荷時における変形定常化に関して検証を行った。結果として"繰返し時の挙動は密度,繰返し応力振幅の影響を受け","繰返し後の挙動は,直前に発達した異方性の影響を大きく受ける"ことが分かった。同試験結果を受けて,現在既存の構成モデルを改良中であり,定性的に変形の定常化を表現できるようになった。今後,同モデルのさらなる改良とともに,初期値・境界値問題への適用から,静的・動的を考慮した実地盤問題の解析を行う。 一方不飽和地盤への適用に関しては,一昨年度までに弾塑性モデルを開発しており,前年度は不飽和状態を考慮した圧密試験より同モデルの検証を行い,その適用性を示した。また,土の不飽和的性質に強く影響を受ける"地盤材料の締固め挙動"に関して,これまでその挙動の数値解析的表現ならびに同現象の力学的説明が十分になされていなかったが,同モデルを用いて締固め土の"最適含水比の有無","エネルギーならびに地盤材料の種類による締固め曲線の形状および位置の違い"を適切に表現することができるようになった。
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