2010 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス性慢性疼痛における脱髄および神経可塑的変調機構の解明
Project/Area Number |
08J09743
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
永井 潤 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リゾホスファチジン酸 / 脱髄 / 可塑的変調 / アロディニア / 疼痛過敏 / リゾホスファチジルコリン / オートタキシン / 視床 |
Research Abstract |
本研究は、リゾホスファチジン酸(LPA)を責任分子とした末梢性神経障害性疼痛時の基礎的概念に基づき末梢および中枢レベルでのストレス性慢性疼痛における脱髄ならびに神経可塑的変調機構解明を目的としている。神経障害によってひきおこるLPA特異的な脱髄は後根神経でのみおこる。このことは、脊髄でのLPA産生を示唆する事実であり、実際に脊髄および後根神経でLPAの前駆体であるリゾホスファチジルコリン(LPC)の産生上昇をNALDI-TOF-MS法を用いて定量することに成功した。このLPC産生上昇は、LPA合成酵素であるオートタキシン(ATX)ヘテロ欠損マウスでは増加したことから、神経障害によって産生されたLPCはATXによってLPAへと転換されたと考えられる。また、脊髄レベルで痛み刺激の入力を抑制するモルヒネを神経障害前投与しておくと、神経障害によって産生されるLPC産生増加は完全に抑制された。一方、ATX阻害剤である2ccPA投与は、神経障害性疼痛の形成を抑制し、連日投与により治療効果をもたらすことを明らかにした。これらの事実は痛み刺激がLPC/LPA産生を誘発し、産生されたLPAは痛み増幅機構を介して、自身の産生を増加させていると考えられる。そして、このLPAフィードフォワード機構は上位脳においても成立することを想定し、痛み刺激の第二中継点にLPAを投与すると過敏応答を誘発し、この過敏応答にミクログリアの活性化が関与することを明らかにした。この脊髄および上位脳でのLPA産生増幅機構は痛みの増幅に関与していると考えられ、今後のストレス性慢性痛研究の基盤となることが期待される。
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Research Products
(4 results)