2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物のSAチャネルを介した重力感受機構の遺伝学・生物物理学的研究
Project/Area Number |
08J09762
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
豊田 正嗣 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 重力 / 屈性 / アミロプラスト / 機械刺激受容チャネル / カルシウム / 生物物理 / 植物生理 |
Research Abstract |
デンプン平衡石仮説によると、シロイヌナズナ花茎における重力感受は内皮細胞内の比重の大きいアミロプラストの沈降によって引き起こされると考えられてきた。本研究では、アミロプラストが重力方向に沈降せず、かつ1gで花茎重力屈性を示さないsgr2変異体に着目し、アミロプラスト動態と重力感受の関係を遠心顕微鏡を用いて検証した。1gで重力屈性を示さないsgr2変異体は、10gの過重力に対して殆ど重力屈性を示さないが、30gを負荷することで有意に重力屈性を示すことが分かった。遠心顕微鏡を用いた過重力中のアミロプラストのリアルタイムイメージングを行った結果、sgr2変異体のアミロプラストは10gでは一部のアミロプラストが僅かに動く程度であるが、30gで大部分のアミロプラストが過重力方向に沈降することが明らかになった。これらの結果は、アミロプラストの重力方向への沈降が重力感受をトリガーするというデンプン平衡石仮説を強く支持するだけではなく、sgr2変異体には重力受容機構が存在するが、1gではアミロプラストの運動が極度に制限されているがために重力感受できないという新たな生理学的解釈を与える。更に、沈降したアミロプラストの個数と重力応答の相関関係を解析した結果、これらには非常に強い線形相関があることが分かった。つまりシロイヌナズナの花茎にはアミロプラストの沈降を線形的にシグナルに変換する重力感受機構が存在することが示唆された。別のプロジェクトとして、植物のカルシウム透過性伸展活性化チャネル候補遺伝子であるMCA1と重力応答性カルシウムシグナルに関しては、パッチクランプのデータと合わせて論文を投稿中である。また、新たな重力センサーを単離するために構築中であったクモ毒を用いたスクリーニング法は、GsMTx-4を恒常的に発現させた植物体(細胞質に発現させたラインおよび分泌経路で細胞外に発現させたライン)を作製し、RT-PCRを用いてメッセンジャーレベルでの発現を確認するところまできた。今後は、real-time RT-PCRなどで発現量と表現型に相関があるかを明らかにし、安定した表現型を観察できる系を確立したい。
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Research Products
(9 results)