Research Abstract |
本研究では金属間化合物であるLaves相を強化相とする新しい高強度オーステナイ(γ)系耐熱鋼の設計指針を得ることを目標に,Laves相とγ-Fe相間における相平衡と相安定性及びLaves相の構造変化を利用した析出形態制御を検討した.本年度は特にC14構造のFe_2NbとC15構造のCr_2Nbを中心に相平衡及び相安定性について調べた. 1.Fe-Nb-Ru 3元系における相平衡 Ruはその原子半径がほぼFeとNbの中間に位置しており,単体ではhcp構造を有する.また高強度単結晶Ni基超合金には必須の強化元素であり,またNiとLl_2構造のNi_3Ruを形成する.Ruを添加すると,1473Kにおいて,その添加量が15at.%までは,Laves相は等Nb濃度方向に拡大し,γ-Feと平衡する.しかし,添加量が増加すると,3元化合物が出現し,またさらに添加量が増加すると,Ni_3Nbでは無く,B2構造のRuNb相領域が拡大し,B2とhcp構造のRu固溶体が平衡する.RuはFe siteに置換するため,少量のRuのLaves相への固溶は,大幅な格子定数及び構造変化が期待出来る. 2.Cr-Nb-Co 3元系におけるC14-C15構造間の相安定性 Cr_2Nb, Co_2Nb Laves相は2元系においていずれも立方晶C15構造を有する.しかしCr_2NbへのCo添加量が5at.%以上となると,3元系においてC14構造のLaves相が出現し,その相領域は等Nb濃度方向に大きく拡大する.このためC15 Laves相領域はほとんど拡大しない.C14の格子定数は,Coの添加量に伴ってa,c軸ともに減少するが,c/a比は理想値1.633に近づき,CrとCoの比が1:1のときにほぼ理想値となる.またC14構造内の原子間距離の対称性も向上し,構造の対称性はより理想的なC15構造へと近づく.C14-C15間の相安定性に関しては,CrとCoが同じ原子siteを占有することで,C14のみCr site間の負の相互作用が生じることで,C15に比べC14のギブスエネルギーは低下し,C14構造はより安定となると言えることを明らかにした.このように添加元素間の相亙作用を考慮することで,C15構造のLaves相をオーステナイト系耐熱鋼の強化相として利用出来る可能性を示した.
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