2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09794
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北中 佑樹 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強誘電体単結晶 / 格子欠陥 / ドメイン構造 |
Research Abstract |
1.研究目的 様々な電子デバイスへの応用がなされている強誘電体材料の電気特性は、結晶内のドメイン構造の挙動に本質的に支配される。結晶内に生じる格子欠陥が特性に悪影響を及ぼすことは古くから指摘されてきたが、格子欠陥とドメイン挙動の関係は明らかではない。今年度は、チタン酸ビスマス(BiT:Bi層状構造強誘電体)およびチタン酸鉛(PT:ペロブスカイト型強誘電体)単結晶において、格子欠陥がドメインの挙動に及ぼす影響を調べた。 2.これまでの研究成果 (1)BiT単結晶におけるドメイン挙動と格子欠陥の影響 結晶育成および熱処理時の酸素分圧を調整することで欠陥量を制御したBiT単結晶を育成し、結晶内のドメイン挙動を評価した。圧電応答顕微鏡を用いてドメイン構造を三次元的に解析することで、通常では見られない屈曲した90°ドメインが、電界印加後の結晶内に残存していることが明らかとなった。同様の解析により、格子欠陥が多く、分極特性が劣る結晶ほど、反転が阻害(クランプ)された90°ドメインの密度が増加することも示された。BiT系強誘電体において、欠陥生成の抑制による90°ドメインのクランプ緩和が、優れた強誘電特性を得るために不可欠であることを示しており、高品質強誘電体デバイスの作製の上で重要な指針をもたらす成果といえる。 (2)PT単結晶における欠陥制御の影響評価とドメイン挙動の観察 通常の方法で育成したPT単結晶は、格子欠陥の影響により漏れ電流が大きかったが、Arアニールによる酸素空孔量の最適化や、第一原理計算により設計したW,Mn双極子の導入により、漏れ電流が小さく分極反転が可能なPT単結晶が得られた。PT単結晶におけるドメイン構造観察にも成功したが、電界印加時の圧電歪みにより結晶内に生成するクラックの影響で、詳細なドメイン挙動の観察が困難であった。ドメイン挙動の評価手法の改善が今後の課題である。
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