2008 Fiscal Year Annual Research Report
sp^3炭素-水素結合の活性化を契機とする触媒的カルベン錯体生成
Project/Area Number |
08J09837
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 明夫 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルベン錯体 / 炭素-水素結合の活性化 / α水素脱離 / キノリン誘導体 / カチオン性のイリジウム錯体 |
Research Abstract |
本研究では、これまでほとんど報告例の無い、遷移金属錯体を用いたsp^3炭素-水素結合の活性化、続いて生じたアルキル錯体からのα水素脱離を利用したカルベン錯体の効率的発生法、ならびにその特徴を生かした触媒的分子変換反応の開発を目的として検討を行った。これを実現するためには、一般に不安定であるカルベン錯体の生成を促進する必要がある。そこで、位置選択的な炭素-水素結合の活性化を行い、生じるカルベン錯体を安定なFischer型カルベン錯体とすることで、その生成を促進できると考えた。まずは、モデル基質として、分子内の適切な位置に配位性官能基を有する、8位に活性化する部位を持つキノリン誘導体を用い、それに対し化学量論量の様々な遷移金属錯体を作用させて、本コンセプトで実際にカルベン錯体が発生するかどうかを調べた。用いた遷移金属錯体として炭素-水素結合の活性化能を有するルテニウム、ロジウム、イリジウムの錯体を用い、生成する化学種が不安定であると考えられるので、反応系をNMRによって直接観測した。その結果、カチオン性のイリジウム錯体を用いた場合、新しい化学種が複数観測され、その中の主成分の単離に成功した。これは、以前Crabtreeらが報告している、同じカチオン性のイリジウム錯体を用いたアミノピリジン類から生成するカルベン錯体と、ほぼ同様のスペクトルデータを与えた。完全な構造決定は出来ていないが、今回のモデル基質でもカルベン錯体が生成できるという可能性が示された。次に、この錯体が合成反応に利用可能であるかを調べるために各種補足剤を用いて、その反応性を調べたが、現在のところ基本的に原料回収が主で、目的とする捕捉生成物は得られていない。今後はこの錯体の反応性を更に調べ、用いる配位子や他の遷移金属錯体についても検討を行う計画である。
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Research Products
(1 results)