2008 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類大脳へのin vivo遺伝子導入法による刻印付けの分子基盤の解明
Project/Area Number |
08J09880
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
片桐 幸子 Teikyo University, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 刻印付け / エレクトロポレーション / 遺伝子導入 / RNAi / MAP2 / 神経細胞 / 記憶 / ニワトリ |
Research Abstract |
刻印付けは、孵化後のヒナ鳥が初めて見た動くものを親と認識し、追随する行動のことである。本研究の目的は、刻印付けの分子基盤を包括的に明らかにすることである。これまでに、大脳のIMM(Intermediate and Medial Mesopallium)と呼ばれる領域が刻印付けの成立に必要であり、この領域の全体的なRNA合成が刻印付けに伴って上昇することが報告されている。しかし、どのような遺伝子群の発現が刻印付けに重要であるかということに関しては、ほとんど明らかにされていない。これまでに、刻印付けに伴って発現が変動する大脳遺伝子群58種類をcDNAマイクロアレイにより同定してきた。また、in vivoエレクトロポレーション法により、孵化後のニワトリヒナ大脳に領域選択的かつ神経細胞選択的に遺伝子導入する系を確立し、RNA干渉(RNAi)によって特定の遺伝子発現を抑圧することに成功した。刻印付けに伴う遺伝子発現上昇率が特に高かった微小管結合タンパクMAP2に注目し、脳内での発現領域を遺伝子レベルとタンパクレベルで解析した結果、刻印付けによってIMMや海馬でMAP2の発現が上昇することを見出した。これらの結果から、IMMや海馬では、刻印付けにより発現が上昇したMAP2によって、神経回路の部分的な再編成が起こっていた可能性が示唆された。そこで、申請者が確立した遺伝子導入法を利用して、IMMにおけるMAP2の遺伝子発現をRNA干渉により抑圧することを試みた。その結果、遺伝子導入された神経細胞の細胞質と樹状突起におけるMAP2のタンパク発現が、劇的に減少していることが確認された。MAP2の発現抑圧系が確立されたことにより、刻印付けが成立する初期過程や、思い出す想起の段階でのMAP2の必要性を示すことが可能となった。MAP2の記憶形成における役割を解明する上でその意義は大きいと考えられる。
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Research Products
(3 results)