2008 Fiscal Year Annual Research Report
「すざく」衛星を用いたブラックホール硬X線放射源の診断
Project/Area Number |
08J09910
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 真也 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | すざく衛星 / 硬X線検出器 / ブラックホール / 降着円盤 |
Research Abstract |
本年度は、硬X線放射源の診断の第一歩として、研究計画でも記した「すざく」衛星によって観測されたブラックホール連星Cygnus X-1の解析結果(牧島、高橋、山田et al.2008)について、スペインで行われた国際会議にて口頭で発表した。この結果は、ブラックホーニルからの硬X線放射源として考えられているコンプトン雲の非均一性、標準降着円盤の内縁半径が最終安定軌道よりも後退していることを観測的に示し、理論的には磁場によるシミュレーションとの整合性がよいことから、理論と観測の両面に大きなインパクトを与えることができた。その後、このような研究を巨大ブラックホールにも適用するため、「すざく」衛星が観測したNGC 4258の中心にある巨大ブラックホールからのX線スペクトルの解析を行い、ブラックホール周囲の降着流は、円盤のように幾何学的に薄い構造をしており、コンプトン雲はCygnus X-1で得られた示唆と同様にややスケールハイトが高いこともわかった。本年度の後半は、「すざく」衛星が観測したブラックホールホール連星GX 339-4の解析を行った。この天体はCygnus X-1よりもやや質量降着率が高い状態で観測され、相対論的に広がった鉄輝線が観測されたことからカーブラックホールであるという報告がなされていた(Miller et al.2008)。我々は、同じデータを用いて再解析を行ったところ、デークリダクションやモデル化による不定性が大きく、現状のデータからはカーブラックホールと断定することができないことを示した(山田、牧島et al.2009 submitted)。このような結果は、近年のブラックホール研究における最大の課題である、スピンの測定を正しく観測的に実現していくためにも不可欠である。
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