2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J09968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近田 拓未 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水素 / トリチウム / 原子力 / 核融合炉 / 薄膜 / 透過 |
Research Abstract |
本研究は、先進エネルギープラントで開発課題とされている水素と金属の相互作用から生じる金属の水素脆化および水素の透過損失を、セラミックスの薄膜を設置することによって軽減する技術に関して、薄膜の微細構造と水素透過試験より、セラミック薄膜中の水素透過挙動を解明することを目的としている。2年度目の本年度は、より詳細なセラミック薄膜中の水素透過挙動を検討するために、酸化エルビウムを薄膜材料として用い、低不純物、高密着性の薄膜が得られている真空アーク蒸着法によって結晶組織を制御した薄膜試料の水素透過試験を行った。また、真空アーク蒸着法では不可能な複雑な配管形状に成膜するために、金属エルビウムの溶解した有機化合物を用いた有機金属分解(Metal Organic Decomposition, MOD)法を用いた薄膜の作製を実施した。 真空アーク蒸着法によって室温で作製した薄膜においては、透過試験中に重水素透過フラックスが大きく減少した。これは試験時の加熱による薄膜の結晶構造の変化であると考えられた。また、試験前後の試料断面の透過電子顕微鏡像により、結晶粒径が透過試験によって増加し、また試験温度が高いほど粒径は大きくなることがわかった。結晶粒径の成長に伴い透過フラックスが減少したことから、水素透過は酸化エルビウム薄膜の粒界に沿って移動しているという新たな知見が得られた。MOD法による薄膜作製では、熱処理雰囲気等の作製パラメータを変化させることで薄膜の微細構造の制御を行った。高純度アルゴン下で熱処理した場合、基板-薄膜界面に生じる脆い基板酸化物層が150nm以上となり、均一な薄膜が得られない、または透過試験中に大きく劣化した。一方で、より穏やかな酸化雰囲気である水素+水蒸気中で熱処理を行うことによって基板酸化物層の生成を低減し、真空アーク蒸着法に匹敵する水素透過防止性能を得ることができた。
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Research Products
(10 results)