2008 Fiscal Year Annual Research Report
インド伝統医療の世界拡張から構成される身体とグローバル化の関係の社会人類学的研究
Project/Area Number |
08J09990
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
梅村 絢美 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メディカルツーリズム / アーユルヴェーダ / 南インド / スリランカ / グローバル |
Research Abstract |
本年度、前半期は修士論文の成果発表に比重を置いた研究活動を行った。日本文化人類学会および、南アジア学会研究集会において、修士論文にさらなるデータを追加し、考察を深めたものを発表した。修士論文では、インドにおいて医療が資源として国際通商の主要な商品のひとつとして位置づけられ、医療を観光資源としたメディカルツーリズムが興隆している。報告者は、これを、医療技術者や患者、医療情報が国境をまたいで移動する状況は医療技術者の頭脳流出であると指摘し、医療技術者の流出先の国家の医療状況や、旧宗主国であるイギリスとの政治経済的な関係性をも視野に入れて議論した。分析視角としては、ネオリベラリズムやグローバリゼーションに関する昨今の議論を理論的基盤に、書籍や新聞、雑誌など文献資料を、マクロな視点から分析を行った。こうした議論に加え、本年度における二回の発表では、人類学におけるポリティカルエコノミーに関する60年代以降の議論を参照することで、ミクロな視点から事例を分析することを得意とする人類学の学問領域により接近した議論を試みた。前半期において修士論文に新たなデータを投入し、さらに人類学におけるポリティカルエコノミー研究からグローバリゼーションに対する考察を深めることにより、本研究の主題であるグローバリゼーションに関する理論的な枠組みを習得した。後半期は、本研究課題遂行のための長期現地調査(平成21年度〜22年度実施予定)の事前調査のため、スリランカ(9月6日〜23日)およびインド(9月24日〜11月11日)において、伝統医療アーユルヴェーダの診療所や病院、大学、施設を訪問し、本研究の内容と目的を説明し、調査協力依頼と事前打ち合わせ、および現地調査を行った。アーユルヴェーダ診療所やアーユルヴェーダ大学において、医師に対するインタヴュー調査を行い、診療過程においては患者に対するインタヴュー調査も実施した。このような現地に根差した調査に加え、本研究課題のテーマであるグローバリゼーションに関係する調査も行った。インド、スリランカでは、伝統医療アーユルヴェーダが、観光資源とされ、アーユルヴェーダツーリズムという産業が振興している。これは、前半期に行った研究発表のテーマであるメディカルツーリズムの一つとして位置付けることができる。今後、南インドおよびスリランカにおけるメディカルツーリズムに関する現地調査を続け、ミクロな分析視角をマクロなグローバリゼーション理論へと接続するための理論的枠組みを模索していきたい。
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