2009 Fiscal Year Annual Research Report
インド伝統医療の世界拡張から構成される身体とグローバル化の関係の社会人類学的研究
Project/Area Number |
08J09990
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
梅村 絢美 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 伝統医療 / 南アジア / 身体 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本年度は、昨年度行ったマクロな文献研究を具体化するためにスリランカで半年間おこなった長期現地調査を中心に、研究を遂行した。上半期は、スリランカの公用語のひとつシンハラ語とインドの伝統医療アーユルヴェーダに関する専門的な知識の習得に専念した。10月から半年間行ったスリランカでの現地調査では、昨年度おこなった短期調査の際に調査協力の同意を得ていた二名のアーユルヴェーダ医師のもとで、診療の現場に立ち会いながら調査をおこなった。診療過程における医師と患者とのコミュニケーションを観察したり、医師と患者それぞれに、シンハラ語でインタヴューを行うことで、きわめて質の高い調査成果を挙げることができた。今回の調査中では、医師の診療や家庭内のヘルスケア実践において、昨年度のインドにおける短期調査で得たアーユルヴェーダ実践とは明らかに異なる実践を目の当たりにした。スリランカのアーユルヴェーダは、インド・ヒマラヤから紀元前4世紀に仏教とともに伝来し、仏教の発展とともに普及し、独自の発展をとげている。インドとは異なる社会歴史的変遷の中で、土着化したアーユルヴェーダの具体的な様相を詳細に調査することができた。さらに、アーユルヴェーダの診療に必須である薬草のほとんどを国内で生産するスリランカにおいて、薬草にかんする知的財産と、薬草そのものの遺伝資源の国外流出に関する政府の対応や、伝統医らの「知」に対する価値観との相違から、きわめてローカルな医療実践とグローバルな問題系との接合点を理論化する手掛かりを得ることができた。
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