2009 Fiscal Year Annual Research Report
高精度電子移動理論による電気伝導性DNAの分子モデリング設計
Project/Area Number |
08J10066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 亨 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 金属-DNA / 計算化学 / 導電性計算 / 人工DNA / ミスマッチペア / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
今年度の研究においては導電性のモデリングを行うため、より導電性の高い金属含有DNAを模索した。チミンミスマッチは水銀イオンを取り入れることで分子軌道が塩基対全体に非局在化するのみならず、スタック方向にも広がることが密度汎関数法を用いた計算により分かった。一方で、人工DNAとよばれる核酸塩基に似た塩基に関して、近年硫黄原子を塩基内に取り込むことで柔らかい金属イオン(Ni,Pd,Pt)を取り入れられることが分かっている。ただ、この人工DNAは実験ではUV-Visスペクトルや質量スペクトルでしかデータの裏付けが取れていないことから、理論によるアプローチを試みた。その結果、金属が塩基対間に入るときのみUV-Visスペクトルに変化が起こることを示すことができ、実験の結果を裏付けることに成功した。また、昨年の研究と同様に分散力の補正を加えた計算を用いてこれらの塩基対もスタックすることを示した。導電性の計算を行うにあたり、相互作用項の求め方を従来の摂動を用いるものから直接計算する形に変えることで、より実験結果に近い値を導出することに成功した。これを用いて、水銀イオンを含むミスマッチ塩基対や硫黄原子を含む人工DNAについて導電性を計算した所、水銀のスタックにより導電性が大幅に向上すること、人工DNAにおいては重い金属であるほどに導電性が向上することが分かった。これら一連の計算は合成されて間もない金属-DNA系の安定性や光学特性、電気伝導度に逸早くアプローチしたものである。
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Research Products
(7 results)